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小人の街に巨大な女性が現れた。 名前はじゅんこ、彼女は最近よく街に現れては暴れて壊滅させて満足したら去っていく。 その街も壊滅は秒読みだったがいつものとそれは違っていた。
じゅんこ「今日は手始めにここで小人たちをいじめちゃおう」 ???「遊ぶの?」
突然じゅんこには聞き慣れない少女の声が聞こえてきた。 振り返ると少しじゅんこよりも少し小さい蒼い髪の10歳ほどの幼い子が車数台を踏み潰して立っている。 見慣れない子だが可愛い子だから遊んでやってもいいかなと…とじゅんこは思った。 幼少の頃の妹的キャラのみーなぐらいにしかそんな感情はなかったんだがたまにはいいかな…と思った。
じゅんこ「何して遊ぶ?」 ???「お馬さんー!!」
じゅんこは喜んで四つんばいになった。 もちろん今の彼女が四つんばいになることで多くの小人や建物が潰されていった…。 少女がじゅんこの背中に飛び乗りじゅんこの足がアスファルトを砕いて動き出した。
???「すごーい♪人間の町を壊して進む最強のお馬さーん♪」 じゅんこ「あはは…ところで名前を聞いてなかったわね、私はじゅんこよ」
少女も嬉しそうに名前を教えた。
???「あたしはアールイって言うの♪よろしくねお姉ちゃん♪」
おばさんやババァと言われると激怒し暴れまわるが面と向かってしかも純粋に「お姉ちゃん」と呼ばれてじゅんこの顔に少し笑みがこぼれる。 じゅんことアールイは住宅地を蹴散らしながら進む。 小人にとっては最悪の事態だった。 普通に歩いているのなら踏まれ損ねれば助かる可能性は高かった。 しかし今回はお馬さんを組んでいるため地面を抉りながら進む。 つまり逃げることが出来ず手か足で潰されるのを待つしかない…。 青いジーパンが次々と3mはある住宅を巻き込み人も車も木も巻き込み破壊していく…。 そして突然降ってくる住宅3件分の手によって訳も分からず潰されていく人間も居た……。 仮に逃げ切れても今度は小人にとって2車線道路に匹敵する幅のアールイのつま先によってすり潰される…。 そんな地獄の光景と打って変わってアールイは「お馬さんぱかぱか♪」と陽気に歌っている。 なんだかじゅんこも笑顔だった。 結婚もしてないもののこれぐらいの子供が突然出来た感じで母性本能が湧き出てきたのだろうか? 沢山の住宅を蹴散らしていくうちに目の前に橋が見えてきた。 人間としてはとても高い位置にある鉄橋もちょうどじゅんこの目の高さにある程度のものだった。 電車も通っていたがそれを無視してお馬さんを続けた。 やわらかいはずの鼻ががりがりと線路を削り頬も突っ込みメガネが鉄塔を次々と折り数秒で寸断された。 下から見た人間たちはじゅんこの鼻の穴と唇しか見えないまま手によって潰されるか鼻息か吐息で吹き飛ぶしかなかった。 肩まで突入して潰されずに済んだ人間は完全にじゅんこをよけたと思っていた。 しかし人間たちは肝心なことを忘れていた。 次に鉄橋を壊し始めたのはアールイの足だった。 しかもバタバタしていたため多くの柱や橋そのものを破壊され生き残った人間が下敷きになった。 通り過ぎたときにアールイの手には電車が握られていた。 中には多数の人間があたふたしていた。
アールイ「これ半分あげる♪」
8両編成の電車をちぎり4両をアールイがもぐもぐしている。 じゅんこが両手を使えないことを思い出したアールイは指を入れてぱりぱりと屋根を破ってじゅんこの口元に運んだ。 息を一気に吸い込んだじゅんこの口には沢山の人間とその荷物が吸い込まれていった……。
アールイ「お姉ちゃん上手〜♪」
じゅんこも悪い気がしないのか機嫌がいい。 そんなアールイはもぐもぐと電車ごと食べ終わると辺りを見渡す。 この鉄橋がちょうど住宅地とオフィス街の境目だったらしくたくさんの高層ビルが広がっていた…。
アールイ「ねぇねぇ!あそこで遊ぼうよ!!」
じゅんこもたくさん暴れたいと思っていたのかハイハイのままオフィス街へ移動をはじめた。
じゅんこ「それにしてもお母さんとかは居ないの?」
もしかしたら突然この子だけ巨大化してしまったのではないかと考えて質問をするじゅんこだが答えは予想外だった。
アールイ「んーとね…ママはどっちもあたしより大きいよ♪」
アールイのこの言葉はただ親達が大きいという意味にとらえることができる。 しかしじゅんこは違和感を感じた。 「どっちも」という言葉だ。
じゅんこ「離婚したことあるの?」 アールイ「リコン?なにそれ?」
どうやらそうではないようだ。 どっちも母親となるとどうやってこの子は産まれたのか? じゅんこは疑問に思ったが深くは聞かないでおいた。 オフィス街に出てもじゅんこたちの体は道路から大きくはみ出ており隣接しているビルはガラガラと崩れてしまった。 そのときにアールイは降りた…。 アールイの足が破壊を免れたビルを壊している。 ほのぼのとしていた表情から凛とした表情に変わり臨戦態勢になるアールイ。
アールイ「お姉ちゃん逃げて……」 じゅんこ「えっ…?」
そうアールイがじゅんこの背中から降りると同時に闇が集まって目の前に巨大な女の悪魔が現れた。
サキュバス…女の形をした魔物で性を吸い取ったり幻影を見せて襲うことが多い。 そのサイズは今のじゅんこと同じサイズだった。 アールイがこの世界にやってきたのはこの悪魔を退治・捕獲することが目的だった。
サキュバス「うふふ…まさかこんな大きい女が二人居るとはね…準備運動にはいいかな…」 じゅんこ「なっ何!?」
じゅんこに向かって突然飛び掛ってきた女の魔物だがアールイが立ちふさがってじゅんこにはダメージはなかった…。 しかしアールイは腕を鋭い爪で切られ流血をしていた。
アールイ「だい…じょう…ぶ?」 じゅんこ「それは私の台詞よ…こんなに血を流して!?」
腕から流れる血が道路を染める…。 かろうじて手で振り払い飛んだサキュバスはビルを崩して着地した。
サキュバス「うふふ…よく見たらあなた、人間じゃないわね……魂を食べたら楽しめそうね…♪」
訳のわからない状態に放心状態のじゅんこを背に自分の武器を具現化させて対峙するアールイ。
アールイ「お姉ちゃん…あたしは大丈夫だがらここから離れて……」
後ろを振り向くアールイをサキュバスは突き飛ばした。
アールイ「きゃ!!」
アールイは斬られた腕をかばうようにして20階建てのデパートに背中から突っ込んだ。 当時避難は進んでいたもののまだ200人は中に人間が居たがそれもアールイの体と瓦礫によって押し潰された。 デパートが崩れる轟音と人間の悲鳴の中に「お姉ちゃん……逃げて……」というアールイの小さな声が聞こえた。
サキュパス「ふぅーん……この血の味…この女は龍か…面白い…」 アールイ「くぅ…っ!」
ペロペロと自分の腕についた血を舐めとり余裕の表情をしているときにそのサキュバスの頭に雑居ビルの塊が飛んできた。 突然のことで避けられない彼女は吹き飛んで高層ビルに体を沈めた。 じゅんこが投げつけたのだ。
じゅんこ「アールイ!!しっかりして!」
デパートの瓦礫からアールイを抱きかかえた。 アールイは粉塵のせいで白い肌は灰色に汚れ傷からも血がドクドクと流れ出ていた。 じゅんこは必死に叩いて埃を取ろうとしたがアールイは一刻も早く逃げて欲しいらしく じゅんこに聞いていた。
アールイ「何で……逃げないの……?」 じゅんこ「私だけで逃げるわけにはいけないわ…」
遠くからビルが崩れる音がした…。サキュバスが起き上がったのだ。
じゅんこ「まってて…あいつは私が倒すから!」 アールイ「無茶…しないで…」
アールイの制止を聞かずじゅんこは近くにあったバスを掴んだ。 もちろんこのバスにも10名近くの小人が居たが目の前の悪魔を相手にそんなことは些細なことだった。
サキュパス「邪魔をするならあなたも食べさせてもらうわよ!」
じゅんこは接近してくるサキュパスにバスを投げつけた。 「ふん」と鼻で笑ったサキュパスは手でバスを払い飛ばした。 それだけでバスは粉々に砕けて手は側面のビルの一部を崩した。 じゅんこはその隙に巨大化を試みたが出来なかった。
サキュパス「無駄よ。人間の巨大化なんて簡単に封じれるのよ?」
勝ち誇った笑みを浮かべるサキュパスだが横からアールイがタックルを仕掛けた。
アールイ「えぇぇい!!」 サキュバス「!!」
隣に立ち並んでいた高層ビルを3棟崩しながらサキュパスは吹き飛んだ。 息も荒く未だに血が腕から流れているアールイは、とても強い意志を感じるも痛々しいものだった。
アールイ「今よ!お姉ちゃん逃げて!!あたしがこいつを食い止めるから!」 じゅんこ「でも、そんな腕じゃあ…」
視線を敵から背けずにアールイは言った。
アールイ「あたし……ママに言われたの… 大切な人が出来たら全力で護れって…。 お姉ちゃんが大切なものなのかは分からないけど…。 それでもあたしの本能は、お姉ちゃんを護れと言っているからその本能に従うだけ…っ!!」
突然じゅんこの後ろのビルが崩れサキュパスが現れがっちりと羽交い絞めした。
サキュバス「いい加減あなたたちの遊びには付き合いきれないわ…まずはこの女の魂からいただくわ!!」
アールイは舌打ちをして打つ手を考えているが手がない様子だった。
アールイ「それならあたしから食べなさい!あたしはアールイ=アルトノーム! 龍族の姫よ!文句はないはず!!」
それを聴きサキュバスも羽交い絞めを解きじゅんこを横に投げ飛ばした。 じゅんこの体が商業ビルに倒れこむと轟音と共に砕けてビルは瓦礫と化した。
サキュバス「うふふ…いいわよ、龍の姫というのは嘘じゃないみたいだし… 早速いただくわ…」
近づくサキュバスにアールイは手を前に出して条件をつきつけた。
アールイ「でもその代わり…あの人は食べないで…あたしを食べたらもう満足してここを去ることを約束して…」
サキュバス「いいわよ、私は約束は護るわ」
とうとう腕の切り傷を舐め始めた。 舐められたときの激痛に生気を吸われアールイは悲鳴を上げる。
アールイ「いたっ…くっな………おねえ…ちゃ……はや……」
既に声が出ないほど弱弱しくなり命も比例するように奪われていく……。 じゅんこは歯を食いしばっていた。 今まで彼女は小人相手に自身の強大さ、抵抗の無意味さを味あわせていた。 しかし今は自分が無力感に打ちひしがれている…。
アールイ「くっ………うぁぁぁぁ!!」
アールイは限界だったらしく膝を折るようにその場にへたれこむ。 無事だった信号をお尻で潰したが既にその感覚すらアールイは感じることも無い。 もう悲鳴を聞くのは耐え切れない…そう感じたじゅんこはサキュバスに体当たりを仕掛けた。
ドカッ!!ドシィィィィン。大きな振動と粉塵が舞い上がった。 アールイは拘束から開放されたがサキュバスのところにほふくで移動する。 サキュバスは高笑いをしてじゅんこの首を掴んだ。
サキュバス「あははは!!これで私はあなたたち二人を食べれるわね…正当防衛としてね…」 アールイ「そん……なの……約…束違反じゃな……い…」
アールイが弱弱しい声で反抗する。 しかしサキュパスはアールイの腹部に蹴りを入れ浮いたところに回し蹴りを受け吹っ飛ばした。 今度はアールイがいくつもの高層ビルを粉々にして倒れこんだ…。 アールイは視界がかすみ…血と生気を吸われ意識を保つことすら難しい状態になった…。 瓦礫の中で自分の護りたい者すら護れず涙を流すことしか出来ない…。 そのとき声が聞こえた。
???「アールイ…あなたはよくやったわ……後は任せて…」
じゅんこが転送されて次の瞬間には違う女性によってお姫様抱っこされていた。 紅いドレスに長い白い髪…金色の瞳をした女性だった。
アールイ「マ…マ……?」 アルトノーム「うふふ…それにしても派手に壊しているわね…死人も沢山出てるみたいだし……」
じゅんこを抱えたアルトノームはそっと駅の上に置いた。 電車も止まっていて人間も沢山避難をしようとしたがそれも等しくじゅんこの体重を支えられずあっさりと崩れ落ちた。 アールイはここで気を失った……。
サキュパス「あなたは…まさか!アルトノーム家の当主…最強の龍!?」
二つの剣を握り締め斜線上のビルやその残骸を踏み崩して一気に突撃したアルトノーム。 じゅんこもそしてみねうちされたサキュパスすら何が起きたか分からなかった。 彼女達にとっては突然ビルが吹き飛んだと思ったらサキュパスの後ろにアルトノームが居て刀と剣を鞘に納めている…そんな有様だった…。 突然やってきた激痛で意識を失いサキュパスは抱きつくように残ったビルを崩しながら倒れこんだ。 そのサキュパスの首根っこをアルトノームは掴み魔法を唱えた。 しゅくしゅくと小さくなっていくサキュパス…。 それをポケットにしまうと気絶しているアールイを抱き上げてじゅんこのところにきた。
アルトノーム「ごめんなさいね…こんなことに巻き込んでしまって…」 じゅんこ「いいんですよ、私もその子のこと本当の妹のように思えちゃったわ」
その答えを聞き嬉しそうにするアルトノーム。 その後にアルトノームはじゅんこの頭をつーんとつついた。 その直後じゅんこは意識を失った。 気がついたらじゅんこは1000mのサイズになって別の街を潰していた。 夢を見ていたのか…そう感じた。 翌朝その街へ行くと沢山の住宅を破壊して大きく抉れた一本の道が出来ていた。 これを見てじゅんこは昨日のことは夢じゃないんだなと…感じた。 そしてまたじゅんこは街を壊しに現れたが彼女は現れなかった…。
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