プラネットナース?: エリザ / Planet Nurse?: Eliza

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「じゅんこさんは交通を遮断してください。主要道路、鉄道駅、空港、港湾設備を破壊。軽く踏みつぶせば十分です。それより時間との勝負です。急いでください」
「オーケー。分かったわ」
「余裕があれば工業地帯も破壊してください。特に発電所を。あれを破壊すれば『このひと』たちは無力になりますから」

「シロフィーナさんは軍を壊滅させてください。軍事基地の先制襲撃が効果的です。空港はじゅんこさんと協力して破壊してください」
「ふふっ、任せなさい」
「攻撃を受けたら適当に蹴散らしてください。航空部隊は鬱陶しいですが、できる限り撃墜してください」

じゅんことシロフィーナは地響きを立てて、それぞれの持ち場へと散っていった。
山のような大巨人たちに急襲された人びとは、僅か数分間には逃げることも抗うこともかなわなくなり、
何の能力も持たない弱小生物として、この絶望の海の中に取り残されることになる。



「……熱いですか? 痛いですか? 苦しいですか?」

エリザが足元の街に語りかける。

「……でも、貴方たちは何百年間も、この星を虐め続けたのですよ?」
「だから、今日一日ぐらいの苦しみと当然の報い、寛大なお仕置きですわ……」

燃えさかる炎の中から叫び声が上がる。
悲痛な声にエリザは少しだけ哀れみを覚えたが、すぐにプラネットナースとしての自らの役目を思い出し、気を取り直した。

「少しだけ我慢してくださいね。なるべくすぐに楽にしてあげますから……」

ズシィィン…。
エリザの巨大なナースサンダルが、たったいま叫び声の上がった街の一角を踏みつぶした。
肩を寄せ合って震える人びと、火の海を逃げ惑う人びとを、何百、何千と巻き込んで。

「なるべく弱い人びと、助けが必要な人びとから先に浄化してあげないと……」

エリザは火の海の中から負傷者の殺到する病院、避難民の押し寄せる学校などを探し出し、そこを狙って踏みつぶしていった。
足を持ち上げるたびに怨嗟の声が湧き上がるが、足を踏み下ろせば、それは巨大な破壊音にかき消され、静かになる。

「腐りきった貴方たちはもう、こうするより他に救いの道は無いのです……」

罪の意識も無いままに、しかしこの惑星を蝕み続けてきた知的生命体。

「くっ、こんな地下深くまではびこって……」

都心部に張り巡らされた大深度トンネル群を見つけたエリザは顔をしかめた。



「エリザちゃん、苦戦してるわね」
「じゅんこさん! もう終わったんですか?」
「あったりまえよ、こんなの」

じゅんこが誇らしげに指さした先には、巨大な足跡が刻みつけられた空港、踏みつぶされた駅、ズタズタに寸断された高速道路、ひとつ残らず橋が破壊された川があった。
臨海部の発電所からは黒煙が立ち上り、高圧送電線も寸断され、都市は燃えさかる炎以外は闇に包まれていた。
そして今、軍隊を壊滅させたシロフィーナもこちらに向かってくる。

「助かります。手伝ってください!」

体格で勝るじゅんこの一撃は難なく大深度地下まで踏み抜き、一帯を大きく陥没させた。
勢い余ってバランスを崩した巨体は大質量兵器となり、地震を起こしながら街を押しつぶした。

「ふふっ」

シロフィーナは余裕の笑みを浮かべながら高層ビルを蹴散らし、踏みつぶしていく。
炎を反射して輝くロングブーツには、赤黒いシミが無数にこびりついていた。

「少しでも早く、ひとりでも多く……しなければ」

エリザは几帳面な仕事ぶりで、きびきびと、淡々と作業を続けていく。

「ねぇ、エリザちゃん、もっとおっきくなってさ、ぱっぱーとやっちゃおうよ。一踏みで大都市を丸ごととかさ」
「ダメです。時間はかかっても、ひとりひとりの顔が見える仕事をしなければ」
「はぁー。真面目ねぇ」

じゅんこはあきれたという顔を見せながら、持ち場に戻っていく。
シロフィーナは遠大な目的というよりも、今この瞬間の破壊と蹂躙を楽しんでいるようだ。
こうして、性格も体格も異なる女神たち、いや、プラネットナースと見習いドクターによる浄化は数日間で完了した。
そして、雰囲気を一変させて再生された惑星に、新たな歴史が始まるのだった。
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