ちは厨尉 さん: 出張!じゅんこさん

ラッパがトテチテ鳴り響く。非常呼集だ。

「すわなにごとか!」
「今日はおやすみの予定じゃなかったかなあ」
「モゴモゴ、エフンエフン」
「モグモグ食べながら来るんじゃニャいよ!ごっくんしてから来ニャさい!」
「あーあ、今日の盆踊り大会は中止だよ」

兵隊たちは口々におかしい、おかしいぞと言いつつも急いで営庭に飛び出す。
服は乱れ、水筒やカバンなどの装備品はちぐはぐに付けているが鉄砲だけはしっかり持って、第二十五連隊の皆はとにかく集まった。

「連隊長殿に報告ーッ!!」

息も荒く、斥候(見張りの兵隊)が走ってくる。既にボロボロである。

「れ、連隊長殿ーッ!敵はいつものではありません。ものすごいです」
「どういうことだ。落ち着いて報告せよ」


「ハッ、ハイッ。メガネに縦セーターとかであります」



【出張・じゅんこさん】



『なによ、猫ばっかじゃないのよここ!』



メガネをかけた、巨大な女性がずんずんと街を踏みつけ大きな足跡を穿つ。ご機嫌ななめで、気晴らしに来たこびとの街。いつもと変わらないはずだった。

しかし、今回は何を間違えたか。眼下のコビトは、ねこの人間だった。さしずめ「ねこびと」とでも言うべきだろう。ニャーニャー、ギャーギャーと鳴き声が小さく聞こえる。

そして街と言っても、ごちゃごちゃと立ち並ぶ木と紙で出来た家々、木でできた電信柱、牧歌的な商店街に、頭一個飛び出てる火の見やぐら、モダンそのものの、壊すのがもったいないぐらいおしゃれな石造りの「ビルディング」が数本。さらに街外れには、田んぼと畑が広がっている。遠くの山まで見渡せた。
そんなところに現代の、全面ガラス張りの高層ビル群なんて存在するはずもなかった。きっとこびとの目線から見れば、なんて高い空だと驚くことだろう。

肩を落としてため息をつく。女性の着ている縦ストライプのセーターは体付きを強調し、胸とお腹の部分に艶やかな曲線を描いていた。
下半身はと言えば「スキニー」ぎみのジーンズを履き、上にスッと伸びる美脚は、まるで華麗な石造りの塔のような雰囲気をまとっている。

『参ったわ……あんまり動物をいじめるのは趣味ではないのよね』

とは言いつつ、街に出来たばかりの信号機、鈴なりになるほどのねこびとを乗せた路面電車をあっさりバキバキと踏み壊しながら、ゆっくりと街中心部へと向かう。


『(いや、私はクールビューティーなのよ!この程度で破壊を思いとどまるなんてダメだわっ!!)」



萌えとも、慈愛の心ともをかなぐり捨てて高架線をなぎ倒し、群衆でごった返す駅舎を容赦無く踏み潰す。駅舎は体重や力を入れるまでもなく、崩れ落ちる。
彼女は四つん這いになり、煙立ち込める瓦礫の中で動くものをさがす。
モゾモゾ、這いでてきたねこびとを一匹みつける。ニッ、と笑う。そして大きな、大きな指先でつつきまわしていたぶりはじめた。
つつかれたねこびとは必死に駆ける。駆ける。途中、怯えた表情で振り返りながら駆ける。しばらくすると、立ち止まった。肩で息をしているのがよくわかる。またつつく。ふらふらとまた走り出す。また止まる。
いじわるに、それを何度か繰り返す。ついに倒れこみ、動かなくなる。



もうおしまい?くすっ、つまんない。




指先で押し付け、こねくり回す。哀れ、そのねこびとはズタズタのボロ雑巾のように毛羽立った、丸い塊と化した。



と。大きな音を立て、崩れ残れるホームから飛び出すもの。あっ、蒸気機関車だ。珍しい。
機関車は後ろに人々を満載した客車を引き連れ、逃げるように駅を滑り出す。
しかし、彼女がそれを見逃すはずがなかった。走り去ろうとする列車を引っ掴み、ズルズルと引き寄せる。


『あーら、どこへ行く気なのかしら?』


先頭の機関車を引きちぎり、客車の人々に見える位置まで持っていき、さわさわと弄ぶ。機関士の混乱が手にまで伝わって来る。それに対して気持ちの昂りを覚え、手に力を込めて握りつぶす。
蒸気機関車は断末魔がわりの甲高い汽笛を鳴らすと、女性の手の中でみるみるうちに大きな音を立てながら鉄くずに姿を変える。
客車の中からは、絶望に満ちた空気が漏れる。彼女はくす、と笑う。



『そう怖がらなくともいいじゃない。これからあなた達をゆっくりと食べてあげるんだから……』



お姉さんの色気たっぷりのまなざしで全客車をじろじろとひとしきり視姦すると、まるでブドウを房ごと食べるがごとく車両を、もぐもぐと食べ始めた。
中にいるねこびとたちの悲鳴が口に、喉に、お腹に響いて心地よい。

悲鳴、と簡単に書いたが列車にいる乗客は全車で100人以上は軽く超えている。その100人の悲鳴は増幅されて大絶叫となり、それが街にこだまとなって聞こえ、バリバリという客車を噛み砕く音が、今辺りを支配しているのだ!
近くに居るねこびと達にとって、彼女から完全に逃れる術はないと悟らせるには十分だった。

やがて、客車は全て見えなくなった。彼女は満足げに唇を舐め、お腹をさする。



『思ったよりおいしかったわよ?ごちそうさま……♪』



辺りを見渡す。まだ、街並みはそこまで壊れていない。くす、とまたいじわるな笑みを漏らす。


『さあ、これからたくさん暴れてあげようかしらね……フフッ』


眼鏡のレンズがキラリと輝き、怯え、逃げ惑うねこびと達を映し出した。





「連隊ただいま到着ッ。凹面状に陣形をとれッ。第二中隊は正面より、一、三中隊は側面に展開せよ。オートバイ部隊は先行して陽動を開始!行け!!」

サイドカーが、風のように駆けていった。
ヘルメットを被った兵隊たちが慌ただしく右に左に動き回り、侵攻に備える。
大砲は大通りにしっかりと据えつけられ、テキパキと土嚢や木箱で陣地が作られる。大砲はピカピカと誇らしげに光り、巨人膺懲(ようちょう)の自信に溢れているようだった。
強力な重機関銃は家々の屋根に、鉄橋に布陣して天空を睨む。銃身にびっしりと切られた冷却板は異質な人工物で、科学と英知の塊そのものであった。
キャタピラで走り、カーキ色に黄色い帯の迷彩が特徴的な重装甲車は鈍いエンジン音を唸らせて大通りに一列に並ぶ。機関砲を上空に向け振りかざし、周囲を圧する姿はまさに雄姿と呼ぶにふさわしかった。


「敵新巨人、こちらに向かってきますッ」


サイドカーが戻ってきて、大声で報告してくる。何台かは、戻ってこなかった。


「……中隊の展開急がせろッ」


ズンッ……ズンッ……と周期的な響きと、大きな揺れ。どこかで、何かが割れる音。どしゃぁぁっ…と崩れるような、潰れるような異質な音。それらが、より大きく聞こえはじめる。近づく。煤塵が、土煙が上がり始め、街を覆う。連隊の全員が目を見開き、緊張に顔を引きつらせている。汗が、止まらない。


そして、ヌッ、と現われる巨大な影。大きな、大きな……と冗長な表現は彼女に似つかわしくなかった。圧倒的な巨体。



「れ、連隊長殿ッ!『じゅんこ』です!あれはじゅんこです」



中隊長の大尉が慌てる。じゅんこの名は遠く異世界にも轟いていた。

『あら?私の名前がこんなところに知られてるなんて。照れるわね』
「じゅん……こ?なんだそりゃ」
「連隊長殿、非常に凶悪かつ凶暴な相手であります。恐るべき力で敵を容赦なく粉砕すると陸軍大学校の書籍にありました。しかし基本的にガサツな性質であり、そこが弱点であろうと分析されます」
『……へぇ、そう……』


じゅんこ、ぴきぴきと苛立つ。こわい。


「なぜ我が国に正式なる布告ないまま、無辜(むこ)の市民を虐げることをするのか!?返答次第によっては、武力による鎮圧も辞さないぞ」


連隊長が怒鳴る。ふと、じゅんこが周りを見ると小さな猫の兵隊たちが足元を取り囲みはじめていた。銃剣をつけた鉄砲を構えているが、不安げな表情にへっぴり腰。明らかに怯んでいる。じゅんこの胸中に嗜虐心が生まれる。


『……鎮圧、してみればいいじゃない』


いじわるな笑みを浮かべ、腰に手を当てて仁王立ちになる。


『元々その気で来たんでしょ?あんた達のその、なんとかの市民とやらは私のお腹の中よ。なんなら、あんた達もお腹の中の子達と会わせてあげても良いのよ?』


べろり、舌なめずりをして連隊を見下ろす。眼鏡越しの視線が威圧的でありながらも、どこか扇情的でもあった。連隊長、カッとなって喝を飛ばす。

「不埒者め。成敗してくれるニャ!二中隊、傘型散開ッ。山砲、戦砲隊は歩兵隊を援護せよ。やられる前にやれ!攻撃!攻撃!!」
「あッ、連隊長殿。一中隊、三中隊の側面展開がまだ…」
「構わん!ひと泡吹かせてやるニャ!撃て!撃て!!」

一斉に撃ちだす大砲の弾。更に続いて擲弾筒、機関銃の弾が糸を引いてじゅんこのセーターに着弾する。日頃の訓練の甲斐あって、百発百中。次々と命中する。
しかし胸を強調する素敵な縦セーターは、焦げ一つつかない。弾は、ジーパンやセーターにわずかに食い込んだところで止まっているだけであった。

『あっはははは!軍隊なんてどうせこの程度よね。そんなんじゃひと泡どころか、服を破くことも出来ないわよ!』
「じゅんこのあの服はいつもの巨人より分厚く頑丈にできてます。連隊砲の榴散弾では…」
「鉄砲も撃ってみましたが、歯が立ちません。弾丸逆もどりです」
「むむむむ……ものすごい相手だ」


うろたえる兵隊たち。じゅんこがずしんと一歩、一歩と前に出る。軍隊はそれに合わせ、後ろに、後ろにと下がる。それに対し、連隊長の檄が飛ぶ。


「部隊長はこれ以上部隊を下がらせるな!このままだと潰走するぞ!」
『ふーん、逃げないのね。じゃあまとめて潰してあげるわ』


じゅんこは、足を一際高く上げて高い煙突のそびえる町工場を煙突ごと踏み砕き、道路に足跡を穿ちながら、連隊へわざとらしく迫る!
連隊の阻止砲火、一段と熾烈になるも全く効果なし!!


「ぬーん、このまま踏み潰されるのも癪ですね、中隊長殿…」
「馬鹿を言ってる場合ではない、厨尉。貴官も戦闘に加わるのだ」
「まあ、少し時間稼ぎしてきます」

厨尉、ガヤガヤしている連隊本部から飛び出してじゅんこの足もとへまっしぐらに走っていく。

「おーい!おおーい!!じゅんこさぁーーん!!!」

変なのがなんか言ってる…私の名前…かしら?
不思議そうな顔をして、じゅんこは厨尉を見やる。
あっ、彼女からしたら僕の声はピーピーと叫んでるようにしか聞こえないのかも知れない。ずん、ずんと歩みが止まらない。うーん、しょうがない。速攻で潰されるかも知れないけど……。


「もっぱらお肉がついてきて、肌を見せられないと噂ですよ。実際どうなんですかじゅんこさん。太ってきてるんですか?」
『そんなわけないじゃないの!!失礼ね!!!』


じゅんこ、眼鏡補正のかかった鋭い目で僕を睨む。おー、怖い怖い。


『……誰かと思ったら厨尉じゃない。ここはあんたのとこなのね。道理で古めかしくて、現実離れしてると思ったわ。でももう少しロシアくさいかと思ったけど』
「まー、大正浪漫ってやつですよ。ロシアンテイストと言うか、もっと『アバンギャルド』でも良かったのですが…まあそれはさておき、最近の自堕落生活でスタイルには自信はないんですか?百聞は一見にしかず」
『くっ……とにかく服を脱げって言うのねこのドヘンタイめ……』
「どうせ、僕たちの攻撃なんて屁でもないんでしょう?だったら裸でも全然構わないはず!ハンデ下さい、はやく!はりーはりー!」


こいつ……。
とかく、兵隊たちの衆目監視の中、じゅんこがもぞもぞと着衣を脱ぎはじめる。
セーターの裾を掴むと、一瞬の躊躇はあったが、一気にばさっと脱ぎ捨てる。豊かな胸は一瞬ぐにっと変形し、ぶううんと空気を震わせて元に戻る。かの胸は、あらゆるものを葬り去った武器。
靴を、靴下を脱ぎ、ズボンに手をかけて、ぐっと下ろす。多くの予測に反して、可愛らしい、レースがフリフリついているショーツが露わになる。
緑の黒髪が、フワッといい匂いをさせながら靡き、じゅんこが下着姿になった。うっひょーい!



淡い黄色とも、白ともつかない不思議な色合い。そして、レースの花柄が巨大ながらも華やかであり、一抹の可愛らしさを醸していた。三角地帯は、適度に丸みを帯びて彼女の女性らしさを見るものすべてに与えた。
想像よりとても長い、まるでコンパスという表現が妥当な、美脚。きっと触ればすべすべで、気持ちがよいだろう。


兵隊たちは口を半開きにし、頬を赤くして見とれてしまった。鉄砲や機関銃を構える手が下にいく。鼻血を垂らし、クラクラと倒れてしまう兵隊も続出した。いつもと違うオトナの身体に、魅了されてしまったのだろう。




『なっ、なんで赤くなってんのよ!バカじゃないの!?私の方がハダカなのよ!!?』



いつものコビトではまずありえない反応に戸惑い、じゅんこの顔は真っ赤。耳まで赤く染まる。


『さ、さあ…早く攻撃しなさいよね…。私の身体に、よく狙いをつけなさい…っ///』


嬉しはずかし、とはこのことを言うのかもしれない。じゅんこはぎこちなく「グラビアアイドル」みたいなポーズを取って挑発する。



「うひょー!あのじゅんこさんがあんな反応(デレ方)するなんて!これは撮影すっきゃない!!」
「あっ、あのぅ…。これから総攻撃なので、ここから先は一般の方は立ち入り禁止です。ダメです」
「たった今から観戦武官であります、そこをどくのだ、憲兵さん!巨大化学研究のために!!」



パシャリパシャリ撮影し始める民間人ーかどうかは判別しかねるが、間違いなく軍関係者ではない者ーをよそに、連隊は増援を受け、決死的総攻撃の準備を完了した。ここが覚悟の決めどころ!


「今こっちには新兵器があるんだ、怯えることはない!さあ厚顔無恥な巨人をやっつけろ!攻撃開始!」


将校は色気などには惑わされないようだった。
号令の下ドーン、ドーンという轟然たる発砲音。続いて、機関銃のタタタタタという小気味の良い音。続いて突撃ラッパが鳴り渡る。そのラッパの響きは何重にも重なり、街全体が攻め上がってくるようだ。そして喚声が一斉に上がり怒涛のごとく連隊が突進する。

総攻撃が始まった。勇ましいマーチがかかってそうな、猛烈な攻撃。大戦争マーチ!


先ほど発射された砲弾は既に着弾している。砲弾はショーツに命中したらしく、弾痕を残していた。

命中した所が鋭くチクチクと痛い。じゅんこは驚いた。これは秘密兵器、穿孔榴弾の効果だった。
この弾は弾頭の金属を、中心を凹ませた炸薬の高熱で蒸発させ、金属分子のジェット噴流を形成して装甲を撃ち抜く強力な科学エネルギー弾である。
これにより、弾の初速などに関係なくぶ厚い装甲を貫通することが可能なのである!
……なのであるが、チクチクした本当の理由はぶ厚い下着を貫通した訳ではなく、繊維の隙間からジェット噴流が吹き込んだからである。


『っ!意外とやるじゃないの……」


続いて、黒い豆粒みたいなものがパラパラとじゅんこに降りかかる……と思った瞬間、それは爆発した。擲弾筒や小銃擲弾が撃ち込まれたのだ。更に、ロケット花火のような火花が、身体に命中する。重装甲車の機関砲だ。下着に当たるも、貫徹には至らず。

『まあ、どうせそんな程度ね。さて足元に来たコビトさんたちはどうしようかしらね?』

怒涛のごとく押し寄せる兵隊たちをジロリと一瞥する。挑発的な表情ではありながら、鋭く獲物を狙う、オンナの目。射すくめられた兵隊たちは次々と足を止め、ついには立ち往生してしまった。

『くすくす、なにしてるのよ。私ってそんなに怖いのかしら?じゃあ、優しく抱きしめてあげるわよ』

グワッ、と手が伸びてきて兵隊たちを鷲掴みにする。一個小隊分、約五十人が丸々手の平の中におさまった。
手の平の上で、混乱した兵隊たちがデタラメに鉄砲を撃ちかける。そんな攻撃が効くはずもなく、余裕の微笑みで小隊を見下ろす。


『ふふふ、胸で包んであげる…』


豊かな谷間に、パラパラと一個小隊が落とされる。ニャーニャー、キーキー、と小さい叫び声が奥へと消える。一匹、まだ手にしがみつく。振り落とそうとするも、なかなか落ちない。
しばらく兵隊を逆さまにしていた手の平は、くるりとひっくり返り、まるで食虫植物のように艶やかに閉じいき、その兵隊を握りつぶしてしまった。

『あーあ、せっかくなら胸で潰れれば良かったのに…まあどうでもいいわ。すぐに後を追わせてあげるから』

じゅんこ、手を胸に伸ばし、ぐにぐに、むにむに、ゆさゆさと弄び始めた。交互に擦り合わせ、上下に持ち上げ、ずりずりと音を立てる。
小隊は最初のぐにぐに、で潰滅したのに、執拗に追い打ちをかける。
じゅんこがぐぐっ、と胸の谷間を開く。谷間には毛皮と赤い血痕が後に残るのみで、兵隊たちの姿は跡形もなかった。

『ふふん、潰れた感触もなかったわよ。ちょっとは期待してたのに。やっぱり、どこまでいってもコビトなのね』

胸元の、兵隊だったものを嘲笑うじゅんこ。指で胸をこすると、その血痕さえ見えなくなってしまった。
と、足にムズムズと走る感触。どうやら兵隊たちが銃剣で突いているらしい。ニヨニヨと、それを見下ろすじゅんこ。兵隊たちはムダだとわかると、足を伝って上まで来ようとする。

『あら、登る力は他のコビトよりはあるようね……でも脚より上はダメよ。おあずけ』

どずん、と大きく尻餅をついて座り込む。それだけで町の一区画が消し飛び、あらゆるものが一度宙に浮いた。尻餅の衝撃波。足を伝った兵隊たちは空へ放り投げられ、どこかへ消えてしまった。
それでも、二十五連隊は攻撃を続行する。鉄砲にひらめく旗、きらめく銃剣。怒涛のごとく兵隊たちが押し寄せる。
じゅんこは余裕そのもので迎え撃つ。ブラブラさせていた脚を兵隊たち目掛けて下ろす。スッと伸びた美脚は、巨大な鎚となって襲いかかり、兵隊たちを葬った。


『ねー、私飽きてきたんだけど。よわっちくてあくびが出ちゃうわ』


じゅんこ、ふふんと鼻で笑う。私に敵う相手なんていないのよ。
と、びくっ!と全身に走る衝撃。股間から走る衝撃に思わず嬌声を上げた。

『あぁ……ッ!なっ、なにするのよ!?』

見ると脚と脚の間に、爆破筒に破甲爆雷を抱いた決死隊に四角い箱…重装甲車が数台、機関砲を秘部に向けて斉射していた。
股間がガラ空きになった瞬間を逃さず、今度は近距離から新兵器の徹甲実包を使用したのだ。さっきのより数倍強力な弾丸を撃ち込まれ、狼狽するじゅんこ。重装甲車はエンジンを唸らせ、キャタピラをカタカタ言わせて更にじゅんこの股深くへ、決死隊と共に躍進する。
じゅんこ、少し本気になって反撃を開始する。


『ちょっ、調子乗りすぎじゃない!?もう!コビトのくせに!!』


重装甲車の上空から、ゲンコツが飛んできた。直撃。哀れ、見事に粉々となってしまった。更にもう一発。今度は決死隊に振り下ろされ、ほぼ全てがぺちゃんこにされてしまった。じゅんこ、ゆっくりと立ち上がる。


『ふぅ、余興はここまでね。まあ楽しかったわよ。だけど、これでおしまいよ……』


じゅんこが、巨大化を始める。いや、元の大きさに戻るのだ。ぐぐぐぐ、となんとも形容できない音を立てて、空へ空へと伸びていく。
あわわ、なんと言う大きさ。まだ、まだ、まだ大きくなる!

形容しがたい音が止んだ時、そこには天をも貫く大巨人が聳え立っていた。1750m。それはこの世界のありとあらゆる建造物より大きく、連隊衛戍地(えいじゅうち)近くの山々より高かった。その圧倒的な巨躯は、身じろぎひとつでさえ足元の世界に破壊と混乱を生み出すほどだった。


「も、もう終わりー、だね、君が小さく6→|♪…」
「お、おおお落ち着け!深呼吸だ!ヒッヒッフー、ヒッヒッフー…」



『ふふふ…ここまで大きくなったら、もう手加減してもムダね。なにもかも破壊し尽くしてやるわ!』



じゅんこ、大声量を街中に響かせて全てを見下す笑みを浮かべる。


『さー、まずは一歩目よー。ふふふ……しっかり怖がりなさい!!」


大気が揺れ、超大型爆撃機が飛び去るよりも大きな音を立てて巨大な足が、持ち上がり、そして、ゆっくりと落ちてくる。


黒い影が、街を覆い、そして……。


ズゥゥ……ン……と鈍い音を立てて、街は肌色の塊の下に消えた。
第25連隊全滅!何度目の全滅だろうか。
更に、二歩目。霜柱を踏みつけるような感触が心地よい。じゅんこは足をぐりぐりと動かして完膚なきまでに、蹂躙する。黒い、火山灰が積み重なってできたローム層の大地の色が現れ、色とりどりだった街はもう跡形もなかった。
大地が抉れ、うず高い土の山が出来る。ねこびとたちから見れば、すごく大きな瓦礫の塊なのだろうが、いまのじゅんこにとっては砂粒かそれ以下ぐらいに小さく見える。足の指の間からその「砂粒」やいろんなものがはみ出ている。

じゅんこ、顔を近づけて「砂粒」に向かって語りかける。


『ねー、これで終わり?終わりなワケ、ないわよね?』


「砂粒」からは何も返ってこなかった。まあ、当然ね。じゅんこ、眼鏡を光らせ、ニヤリと笑う。

視線を巡らすと、少し先にまだ崩れ残れる街並み。よつんばいで、近づく。入道雲より大きな巨体の出現に、逃げ惑うねこびと。
慌てて逃げてるようだけど、私には止まって見える。


がおー、食べちゃうぞー。ふふふ。


舌なめずりをして、柔らかそうな綺麗な唇を近づける。そっとキスをする。それだけで街は半壊した。ふふ、照れ屋さん。口を開ける。今度は硬そうな、真珠のように白く輝く歯が現れ、街並みに襲いかかる。


バリバリ、グシャァ、ボリ、ボリ……ごくん。


音を立てて、街並みはじゅんこの口の中へ消えた。大きく、ぽっかりと穴を開けた大地と、その中で陽光にキラキラと照らされて光る、泡立つ唾液だけを残して。


街並みが消えたと同時に、しっかり実った胸が、「口撃」から逃れた街にのしかかっていた。電信柱も瓦の屋根も銀行も、何ひとつその重さに耐えられず、潰されてしまった。更に接地した胸は獰猛に形を変え、大地をえぐる。

じゅんこが上半身を起こすと、クレーターがしっかりと残っていた。身体の形。そして、胸が当たっていた部分に、更に深い穴。美麗な、女性の身体が、あらゆる災害より大きな被害を引き起こしていく。


私ってば、まるで「めがみ」みたい。

自ら起こした大破壊に、高揚感と優越感、性感を覚える。口が歪む。

と。ポン、ポンと身体にあたるもの。砲弾だ。まだ生き残りが?じゅんこは辺りを見渡す。



みつけた!



山の中に、高射砲が隠れていた。高射砲は飛行機を撃つ為の、大砲。1750mもの巨体になったじゅんこに対して、頭のてっぺんから足まで狙える、唯一の兵器。口径10cmを超える、重対空砲。陣地を作り、ちょっとやそっとじゃ壊れないように作られている。その周りに、アリより小さな兵隊が動き回る。
そして、細い火花が飛んでくる。こっちは機関砲だ。

しかし重対空砲を主力とする対空陣地と言えど、じゅんこからすれば、ホチキスの針で作った図工の作品。相手にならない。


『おとなしく隠れてればよかったのに……うふふ』


ずうん、ずうんと足音を響かせて、高射砲陣地に近寄る。その間にも果敢にも高射砲は火を噴き、お腹に、胸に、眼鏡にと砲弾を当てる。が、効果なし。

じゅんこ、山を跨ぎ、高射砲陣地のすぐ上にそびえ立つ。
真上を向いた高射砲は最期まで砲弾を撃ち続け、急所である股間を攻撃し始めた。
ショーツに砲弾が集中する。

ふーん。そういうことなら。じゅんこはショーツを脱ぎ捨て、ブラも取り去り、一糸まとわぬ裸になった。

ゴゴゴゴゴ…と言う音が聞こえる。圧倒的な巨体。


『ふふふふふ……今度はこっちのおくちで食べてあげるね?』


秘部を指で広げる。グバァ…と重々しく開き、女性自身を露わにする。
愛液が、涎のように垂れ、まるで飢えた猛獣の口を彷彿とさせた。
露出した秘部に、砲弾が赤い糸を引いて吸い込まれていく。
ズン、と身体に重く響くのは高射砲弾だろう。突き上げる衝撃がとても気持ちいい。つんつん、となるのは機関砲の弾。むずがゆくて、焦れったい。
それらによって、じゅんこの身体は上気していく。艶っぽい口から、お約束の言葉が紡ぎ出される。


『今から3秒数えてあげる。その間に逃げてみなさい?さーん、にーぃ、いーち……』


逃げる気配はない。撃ってくる。


『ゼロ!いっくわよー!!』

「ニャッ!?わっけわかんニャイニャ!!」

思いきり股間を山に叩きつける。慌て始めた兵隊たち、もう遅かった。下敷き。
もう遅かったと書いたが、今のじゅんこの身長は1750m。音の速さは、秒速で約340m。地表に届くまで5秒ほどかかるのだ。そりゃあ、わっけわかんニャイわけだ。変なタイミングで声が届く事になる。
しかし、じゅんこにはそんなこと知りっこない。


『ふっふーん。私の言うこと聞かないからー。よーくすり潰してあげるわね』


きれいに整えられた「森」が、山の森林を巻き込み、なぎ倒す。高射砲に絡みつき、鋼鉄の砲身を容易にえぐる。ぷっくりした秘部がローラーのように全てを巻き込み、潰していく。
後には、白くねばねばとした液体が残り、銀色の糸でじゅんこの秘部とつながっていた。
引き潰された樹木や高射砲、砲兵たちはみんなまとめて、圧倒的前後運動によって愛液、土砂と混じり、凄まじい量の恥垢と成り果て、何もかも残らなかった。

じゅんこの身体が、前後に速くなる。秘部を更に山に擦り付けているのだ。大山鳴動して女一人!山滑りや地割れが起き、更に山容は改まっていく!!


喘ぎ声が更に高く天を衝く頃、既に山々は平らにならされ幾つか愛液のカルデラ湖が形成されていた。



『くぅ……ぅうん!イく!イくわぁっ!!!』



じゅんこが絶頂を迎える頃には、既に山脈はいびつな形に崩され、名山と言われていた光景はなく、白く輝くものが所々にあるだけの、見るも無惨なハゲ山と化していた。


『んっ…あああ!ああああああああーーーーっっ!!!』


じゅんこが一際大きな嬌声を上げると、どすぅぅ…ん……と言う数十km先にも聞こえるような地響きを立てて倒れ伏す。
大量の愛液が噴火し、溶岩のようにねっとりと山村を飲み込み、木をゆっくりと押し倒し、野次馬していたねこびとを巻き込み、流れていった。
じゅんこは、しばらく肩で息をしていたが呼吸を整えるとゆっくりと立ち上がる。



『ふ…ふふふ……これはほんの小手調べよ。これから毎日、あなたたちに巨大娘のなんたるかを、私の恐ろしさを叩き込んであげる。みっちり仕込んであげるからそのつもりで居なさい……いいわね?』


大地を踏みしめ、まだ破壊されぬ華やかな街や軍港、田園地帯を仁王立ちで見下ろす。高笑いが、列島中を支配した。







ーこれから先はじゅんこさん的に不許可ー


おもむろに脱ぎ捨てた服を回収しに、また街に戻ってきたじゅんこ。


『さて、服着なきゃ……Gパン……あった。よいしょ……うっ、ちょっ、ちょっと……ウソ……』


色んなものを食べ過ぎて、、今まで着られていたものが着られない。街ひとつ分食べたんだからムリも無かったが、驚愕する。

『こら……これ着られないと私裸で……うっ、この、んんんーーっっ!!』

顔を赤らめ、崩れた街の中必死にGパンを履くじゅんこ。

バシャッと言う音。物陰に隠れてニヤリ、ほくそ笑む。
よし、じゅんこさんの決定的な場面が撮れたぞ!これを先生に……。

『……何してるのかしら?』

いつの間にか、ニッコリ笑いながらもピキピキと青筋立てたじゅんこがこちらを見下ろしている。なんという第六感。厨尉が凍りつく。ズルリ、Gパンが下に落ちる。ズン、と言う音と地響きが静寂を破った。

『……処刑よ』

足がすくんだ厨尉を捕まえるのは簡単だった。手の平の上。

『さて、落ちて死ぬか、潰されて死ぬかぐらいは選ばせてあげる……』

一回言ってみたかったわこのセリフ!と言うコーフンをおくびにも出さず、じゅんこは冷たく手の平の厨尉を見下ろす。

「ちょっと待ってください。えーと『ちは厨尉参上』『お目汚し失礼しました』と、ラクガキ……よーし、これで記念撮影w……」


グシャァ……と言う水分の含んだ粉砕音が静かな街に響き渡った。




お し ま い
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