アスカ: Secret Desire - Episode 1 Asuka

原案: Iceman
文: June Jukes



とある夏の日の夕方。

「ただいまぁ」
「……」

むなしいことに、部屋に戻ったオレを迎える声は無かった。
黄昏時、誰もいない室内。
おまけに外から聞こえるヒグラシの声。
否応なしに寂しさが際立つ情景だった。

(アスカさん、今日は早く帰れるって言ってたのに……急に残業でも入ったのかな?)

今日は早朝からずっと炎天下でのバイトだった。
汗だくの上半身には、濃縮された塩分が染み込んだシャツがべったりと貼り付いていた。
しかも、一日中締め切られていたこの部屋には熱気が充満していて、さらに汗が噴き出してきそうだった。
今夜も寝苦しい夜になりそうだ。もう勘弁してくれと嘆きたくもなる。
ともかく、早いところシャワーを浴びたい。
意を決して灼熱地獄の部屋に踏み込み、慌しくクーラーをつける。
温度調節のボタンを連射。当然、風量も最大だ。

ピ……ピ……ピ……

涼しげな音を立てるくせに反応が鈍いリモコンが、なんとも癪に触る。
暑さのせいでイラついているのが、自分でも分かる。

「はぁ……一体、いつまでこんな暑いんだか……」

思わず溜め息混じりの愚痴が飛び出してしまう。
ともかく、体にまとわりつくシャツを鬱陶しげに脱ぎ捨てて洗濯機に放り込み、浴室に駆け込んだ。


汗を流し、クーラーが効いて涼しくなった部屋に戻ると、ようやく生き返った心地がした。
熱気に代わって吹きつける冷気が爽快感をもたらしてくれる。

(ふぅ……さっぱりした……)

少し上機嫌になって濡れた髪をバスタオルで拭いているとき、着信音が鳴った。

(おっ! アスカさんだ!)

この音はアスカさん専用。オレにとって大切な人だから一秒でも早く出たくて、こうしているのだ。

「もしもし、アスカさん?」
「あっ、裕也? ごめーん、ちょっと仕事が長引いちゃったー。で、もうすぐ会社出るからー」

オレのカン通り、やっぱり残業だった。
でも、あまり遅くならなくて良かったな。

「晩メシどうします? 何がいいですか?」

今日は自分が食事当番だったので、まずはアスカさんの希望を伺おうとしたのだが……

「ねぇ裕也ー、悪いけど駅まで来てくれるー?」

アスカさんはオレの質問を完全スルーしてくれた。
しかし、こんなのはいつもの事だ。
人の話を聞かない、もとい「高度なスルースキルを備えた」アスカさんとのやり取りも、もうすっかり慣れてしまった。
こういう人に対しては相手のペースに合わせること、つまり今はアスカさんに先に喋らせてしまうことが肝要なのだ。
ということで、オレは自分の質問などまるで存在しなかったかのように答えた。

「駅って、また『デザイア』ですか? ついこの間の火曜にやったばかりじゃないですかー」
「えー、いーじゃない、好きなんだからー。そういう裕也だって、だーいすきなオナニー、3日も我慢できるのかなー?」
「なっ……」

不意に痛い所を突かれ、分かりやすく狼狽えてしまうオレ。
ちょっと情けない。

「お、オナニーって……アスカさん! まだ会社ですよね? マズいッスよ、そんな単語!」

でも、まあ確かにアスカさんの仰る通りだ。
一応オレだって年齢相応の健全な男子(のつもり)だから、性欲は日々適度に発散していかねばならない。
おまけに、この同居人さんは客観的に見てもかなりの美人で、しかも今みたいに躊躇なく「オナニー」なんて口にできてしまう奔放な性格なのだ。
これだけの条件が揃って3日間もオナ禁できるかと問われれば、残念ながら Yes と言える自信は全くない。
少なくとも心身の健康には良くないな、うん。

で、アスカさんと言えばやっぱりオレの制止も聞かず、電話口でさらに「オナニー」を連呼してきた。

「ね、おんなじでしょ? 裕也のオナニーと私の『デザイア』。 どっちも我慢すると体に悪いしー、本能的なものだから仕方ないのよ。
 あ、私もたまにオナニーしてるよ♪ もちろん、ユ・ウ・ヤ・で♪
 こう、押し倒されてー私は為す術もなくてーみたいなシチュで♪ うふふふ♪」
「な……ちょ、一体なんスか、もう!」
「冗談よ、じょ・う・だ・んー♪ でも、これがまるっきり嘘でもなかったりしてー♪」
「ちょ、どこまでホントなんですか!」
「あーら気になるのー? さぁーて、どこまでだったかしらねー♪」

こうやって遊ばれてしまう訳だが、いや、これも当然の事なのだ。
考えてもみてほしい。
妙齢の美しい女性が不適切ワードの連発で誘惑してきたのだ。
しかも、オレをオナニーのオカズにしているなどという新事実まで飛び出した。
健全な男子が、これに色めき立たずにいられようか?
おまけに、実はオレだってアスカさんをオカズにすることも無いとは……ごめんなさい、ほぼ毎回そうでした。
押し倒して襲うというシチュエーション、これも完全に図星ですッ!
自分でも顔が上気しているのが分かるが、意識して一呼吸置くことで気持ちを落ち着かせる。
アスカさんの悪ノリを早く止めなくては。

「いい加減オナニーから離れてくださいよ、ね! そもそも話はそこじゃなく……」
「ちょっと裕也! 来るの? 来ないの?」

アスカさんは、再び絶大なスルースキルを発動して強引にオレに決断を迫ってきた。

 もっとも、ここでオレが拒否するなどということは有り得ない。
アスカさんと「デザイア」するのは、メッチャ楽しいことなのだ。

「それはもう行きます! 行かせて頂きます!」
「うむ♪ 素直でよろしい。じゃあ、その素直さに免じて今晩はお姉さんが奢ってあげよう! 何か食べたいもの、考えといてね♪」
「おっ、マジですか? ラッキ〜」

晩メシの話題はとっくに吹き飛んでいたかと思っていたけど、アスカさん、ちゃんと聞いてたんだ。
しかも、奢ってくれるだって!
アスカさんはちょっと、いや、かなり強引な所もあるけど、それを補って余りあるほど気配りもできるお姉さんなのだ。

「じゃ、駅に着く前にまたメールするから、いつものトコで待ち合わせね♪」
「了解ッスー」

電話を切ったオレは急いでガシガシと髪を拭き、新しいシャツを着た。
出かけるのはまだ先なのだが、どうにも待ち遠しくていそいそとしてしまう。


世間から見れば、オレとアスカさんは恋人同士に見えるのだろう。
アパートの一室に若い男女が同居と聞けば、まずはそう思われるのが当然だ。
確かにオレはアスカさんのことを一人の女性として好きだし、アスカさんもオレの事を好きだと言ってくれている。
恋人同士なのはホントだ。
でも、オレたちの関係は「それだけ」ではないのだ。

季節が一回りするくらいアスカさんと一緒に暮らしてみて、分かったこと。
このふたりは、実は「姉弟」のようでもあるのだ。
いや、そもそもこうなったのは、アスカさんが

「同居人として恋人同士もイイけど、姉と弟みたいな関係もいいよねー。私、前から弟が欲しかったしー」

と言い出したことが発端である。
で、オレも特に拒否しないでいたら、アスカさんは時々「姉」になりきるようになった。

「裕也は私の弟なんだから、お姉ちゃんを迎えに来なさい!」

と命令したかと思えば、「姉貴」と呼ばれてみたいと言い出したり……
とにかく、アスカさんが姉っぽく振るまい、オレはそれに弟っぽく応え続けた。
そうしているうちに、オレの方も少しずつ本当にそんな気分になってきてしまって、現在に至るというわけだ。


アスカさんからの「もうすぐ」メールを受信して、オレは家を飛び出した。
自転車に乗り込んで颯爽と漕ぎ出せば、割と賑やかな最寄駅までは5分とかからない。
家路を急ぐ半袖ワイシャツ姿の人々、学生、そして買物客が行き交う喧騒の中に、時折セミの声が混じってくる。
外はすっかり暗くなったというのに……各々が短い一生を全うしようと懸命なのだ。
これぞ、まさに夏の終わりという感じの光景だった。

駅前駐輪場に自転車を置き、待ち合わせ場所の改札口に駆けつけた。
周辺を見渡して、どうやらアスカさんより先に着けたらしいことに安堵する。
アスカさんは時間にうるさい人ではないけど、オレの気持ち的には、やはり男として女性を待たせたくはないのだ。
そうこうしているうちに、通勤客たちが続々と階段を降りてきた。
たぶん、この電車に乗っているはず……
人波の中にアスカさんの姿を探す。
すると、仕事帰りの疲れた顔が並ぶ中、ひときわ輝いて見えるスタイルの良い美人が見えた。

(……いた!)

オレの「姉」兼「恋人」のアスカさんだ。
手を振って合図を送る。アスカさんもすぐに気付いて、手を振り返してくれた。

 手を振る、早足でこっちに向かってくる。
そんなアスカさんの一挙一動ごとに、服の上に浮かび上がった巨乳がゆっさゆっさと揺れているのが分かる。
電車の中に居合わせた人たちも、これはかなり良い目の保養になっているんじゃないかな?
でも、このおっぱいはアスカさんとオレだけのもんですから。ふふっ。

「お待たせー♪ さて、まずどうしよっかなー。裕也、お腹すいてる?」
「あ、大丈夫です。先に『デザイア』でいいッスよ」

こうなると見越して家を出る前に菓子パンを食べておいたのは、やはり正解だった。

「そう? じゃ、お言葉に甘えて♪ あー、3日もデザイアしないと体がウズウズしちゃうのよね~♪」
「でも、先月は1週間とか行けなかったこともありましたよね」
「そーなのよー。仕事が忙しいと、どうしてもねー。でもっ♪ 今月はまだ少し余裕あるから、このスキにやれるだけやっとかないとね♪
 裕也も私とデザイアできて嬉しいよね? ね? ね?」

頭半分くらい背が低いアスカさんが、オレの顔を覗き込むようにしながら迫ってくる。
その仕草と表情にキュンとさせられながらも、オレは勢いに押されて半歩後ずさりしてしまった。

「ちょちょ、アスカさん、『ね?』が多過ぎますよ。でも、そうッスねー、先月は一緒にいられなくて寂しかったんで……」
「……で、オナニーしてたんだ?」
「ちょ……ちがっ!」
「あー、裕也クン紅くなってるー♪ うんうん、キミはそういうトコが可愛いのよね~」

頭をなでなでされた。
こうやってアスカさんに可愛がられていると、くすぐったいような感情が湧き出してくる。
これが弟としての「姉萌え」ってヤツなのだろうか?

「じゃ、行くわよ」
「了解ッス!」

こうして、オレとアスカさんは手を繋いで歩き出したのだった。


金曜の晩ということもあり、受付はかなり混んでいた。
オレたちみたいなカップル以外にも、学生や社会人のグループ、そしてひとりで遊ぶと思われるヤツも結構多い。
アスカさんがカウンターで店員と話している間、手持ち無沙汰のオレは、何となく壁に貼られたポスターを見ていた。
この秋投入されるデザイアの新機種、「DESIRE IV」。
オレが中学の頃の初代機は今から思えばかなりチープだったのに、最近のは凄くなったよなあ……
 
【DESIRE】(デザイア)

大手エンターテイメント企業 Seventh Heaven社が開発した「バーチャルリアリティ体験型ゲーム機」の名称。
他社の類似機種も「デザイア」と呼称されており、すでに普通名詞化しつつある。
ゲーム機とはいえ人間がすっぽり入れる大型筐体のため、主に家庭用ではなく店舗用で、
それも特にカラオケボックスから業態変更したところに設置されることが多い。
現にいまオレたちがいる店だってそうだ。後は、ゲーセンとかの一画にあったりすることも多い。
そもそも、DESIRE とは正式名称の「DEvice of SImulated REality」の頭文字を繋げた造語(アクロニム)なのだが、
これはたぶん「Desire」=「欲望」という言葉が先で、正式名称の方が後付けなのだろう。
仮想空間は、何でもできてしまう世界。
たとえ現実世界では許されざることであっても、なんでも、そう「欲望」のままに……

しかしまあ、元カラオケボックスという都合上、やはり筆頭に挙げられる使い方は「デザカラ」だろう。
こいつのおかげで、世間一般のカラオケシーンは劇的に変わった。
そういえば、この前ゼミの打ち上げで「デザカラ」に行ったとき、先生が思い出話をしてたっけ。
昔はカラオケと言えば狭い部屋だったのに、今は仮想空間の広いステージで歌えていい時代だねって。
解放感は桁違いだし、コスプレだって簡単だ。
それにしても、あの真面目な先生が昔のボーカロイドのコスプレで弾けていたのには、
人は見かけによらないというか、とにかく驚かされてしまった。
訊けば、先生は学生時代にボーカロイドが歌って踊る動画を作っていたのだと。
当時パソコンで延々作業していたものも、今では自分が踊ったものを多少修正すればすぐ完成。
簡単になったねぇ……と、感慨深げだった。

サバイバルゲームが趣味の友人も、最近はほとんどデザイアでやるよと言っていた。
だから FPS との境界が曖昧になっちゃってと苦笑していたな。
リアルのサバゲは夏は死ぬほど暑いし、そもそも季節に関係なく埃と汗まみれになるのは避けられない。
デザイアならそんな苦労とは無縁で、肉体的な疲労も少ない。
それに、実弾の音と反動を「体感」できるのは、趣味人にはたまらない興奮らしい。
市街戦もできるし、野砲だ戦車だヘリだと、リアルじゃ考えられない「小道具」まで登場させられてしまうのだと。

そして、デザイアの使い方は何も遊びだけじゃない。
自動車の教習からパイロットの訓練まで、ありとあらゆるシミュレータも今ではすっかりデザイアに置き換えられてしまった。
予備校の授業や企業の会議でも取り入れている所があるらしい。
だけど、そういえばデザイア上で会うのを「デザオフ」と呼ぶの、あれはよく考えると間違ってるよな。
デザイアは間違いなくオンラインなのだし。

そして、もうひとつ。
表だって語られることはないけども、デザイアにはまだ別の重要な用途があるのだ。
これは端的に言えば、デザイア上でセックスすること、だ。
なにせ何でもできてしまう仮想空間なのだから、当然と言えば当然の使われ方だが。
今や、デザイアを使ったヴァーチャル・セックスは、男なら誰でも一度は経験があるはずと言っても良いだろう。
だけど、そればっかりでは「リアル童貞」という有り難くないレッテルを貼られてしまうことになる。
風俗でしか経験がない奴を「素人童貞」と呼ぶのと同じことだ。

NPC 相手では味気ないからと、リアルの異性とデザイア上でえっちするのも、オレらの世代では当たり前になった。
ぶっちゃけて言えば、今ココにいるカップルたちの大半はそれが目的で来ているのだ。
まあ、オレたちもそうなのだけど。


ようやく受付が完了した。
店内にはオープンスペースと個室があるが、アスカさんとふたりのときはいつも個室を選ぶ。
ヴァーチャル・セックス中でも、外目には筐体内におとなしく座っているだけだから他人に分かりやしないのだが、
それでもオープンスペースでヤるのには、かなり抵抗がある。
それに、個室ならリアルでもアスカさんとくっついて座れるし、ね。
エレベータから出て、2人用の、つまり事実上はカップル用の個室が並んだ長い廊下を歩く。
この階は全部、そんな個室になっているのだ。
途中、向こうからオレたちみたいなカップルがやってきた。
大学生かな? 彼女さんは随分とはしゃいでいる。
アスカさんとは全く違う、背が低くて童顔の可愛い彼女さんだ。
オレたちが「姉弟」ならば、さしづめあっちは「兄妹」ってところだろうか。
(いやいや、ロリ系と見せかけておいて、何気に結構けしからんおっぱいですな……)
アスカさんに悟られないようさり気なく、だがしっかりと彼女さんのスペックを確認してしまう。

だが、アスカさんはオレより一枚上手だった。
オレたちの個室の前に着いたとき、アスカさんは唐突に切り出してきた。 

「いま廊下ですれ違ったカノジョさんさー」
「えっ?」

(ドキッ!)

「裕也ってば、ずーっとチラチラ見てたでしょ」
「へっ!?」
「もう、気付いてないとでも思った? 悪いけどバーレバレだよ」

(あばばば……)

「いえっあのっ、別にそういうつもりじゃ……」
「あーあー、分かりやすく慌てちゃってー。別にいいのよ、オトコっていうのは『そーゆー遺伝子』なんだし。
 だけどね、おねーさんは何でもお見通しなんだから、これ以降コソコソ下手な芝居をしないことっ!」
「すみません……」

ああ、今日もオレは完全にアスカさんの「弟」です。
お姉様には勝てませんっ。

「ま、それはともかく……今は楽しみましょ?」
「はいッ」

オレはサッと個室のドアを開け、アスカさんを先にお通しする。
アスカさんは満足げに室内に入り、デザイアの筐体にしつらえられた椅子にドサッと腰掛ける。

「ふ~、クーラーガンガンで涼っし~」

個室でふたりきりになった瞬間、アスカさんは早くもギアチェンジだ。
ただでさえハイテンションなのに、それがさらに上がるのだ。

「さぁ、いくわよ! 仮想空間へレッツ・ゴー!!」

慣れた手つきでメモリカードをスロットインし、ヘルメットとグローブ、そして諸々のインターフェイスを装着する。
ふたりで徹底的にカスタマイズした特製のゲーム空間は、ロードに結構な時間を要するのだ。
その間は、はやる気持ちを抑えながら、仮想空間にうまく没入(ダイブ・イン)できるように目を閉じていた方が良い。
それなのに、アスカさんはオレの手を握ってきて……気持ちが乱れそうになる。

(ちょ、心拍数上がっちゃうよ……!)

でも、アスカさんと手を繋いでいたい。
機械的なカウントダウン音声を聞きながら、オレは、初めてアスカさんとデザイアに来たあの日のことを思い出していた……


正直言って、アスカさんの趣味は「かなり」変わっている。
今ではオレも完全に染められてしまったけど、元々は全くそんな趣味は無かった。
いや、考えたことすらなかったというのが正確なところだろう。

今でも、オレたちと同じデザイアの使い方をするヤツなんて、周りでは聞いたことがない。
だが、前世紀の古典に曰く「ネットは広大」なのだ。
アスカさんから教えてもらった同好サイトは、どこも非常に活発だった。
この世には、こんな風に自分の知らない奥深い世界が、数多く存在しているのだろう。
とにかく、アスカさんも自分の趣味が相当変わっていることを自覚した上で、オレに打ち明けてくれたのだ。
あれは付き合い始めたばかりで、オレがまだ「クン」付けで呼ばれていた頃だった。

「あのさ、裕也クン、ちょっと話があるの……」
「何ですか、急に改まって?」
「……私って『物を壊す』のが好きみたいなんだ。生まれつき」
「はい?」

言っている意味がよく分からなかった。

「うん。壊したり、壊れていくのを見たりするのが、好きなの」
「ちょ……物騒ですねぇ。
 でも、アスカさんがそんな事してるの見たことないですけど?酔って暴れるとか? いや、それもありえないか」

アスカさんがお酒に強いことは、もう分かっていた。

「そうじゃなくて……その、ほら裕也クンも知ってるでしょ? デザイア」
「え? そりゃ知ってますけど……
 あっなるほど、仮想空間で物に当たり散らしてストレス発散ですか?」
「んー、確かにそうではあるんだけどー。何て言うか、それだけじゃなくて……ちょっと口では説明しにくいのよ。
 でね、一度見てくれれば分かると思うんだけど……いいかな? いいよね? うん、『百聞は一見にしかず』って言うじゃない!」

例によって、このときもオレには選択権が無かった。

「別にいいですけど、何でそんな予防線張るんです? アスカさんらしくもない」
「うーん、その、これは普通の人から見ればかなり特殊というか、想定外だと思うから……
 で、裕也クンにドン引きされたらヤだな、って」

こう言われても、オレの脳内イメージではアスカさんが金属バットを振り回すとか、
せいぜい、例のサバゲ好きの友人のようにマシンガンを乱射、戦車で砲撃するとかかなという程度だった。
破壊衝動という「欲望」をデザイアで晴らすというのは、その名の通りの使い方。
むしろ理に適ってるじゃないかと思ったくらいだ。

「一応言っとくけど、仮想空間だからどんなに危ないことがあってもリアルには大丈夫なんだからね?」
「大丈夫ッスよ。自分もデザイアは知ってますし、友人とサバゲやったこともありますから」
「うーん、多分そんなレベルじゃなくて……驚くなって言っても無理だと思うけど、これが私の趣味だから。 諦めて……ね」

それでもまだ、オレはアスカさんの言葉を軽く考えていた。
むしろ、このときはアスカさんが見せていた妙な恥じらいの表情にドキドキしていて、少し上の空になっていたんだと思う。
お姉さん風味120%で上から圧してくる普段の調子とは、まるで違っていたのだ。
しかし、それからまもなく、オレはアスカさんの言葉の本当の意味を噛みしめることになるのであった。


アスカさんが用意した仮想空間で目を開いたオレは、意外な場所に立っていた。
業務用エアコンの室外機やダクトが並んだ……ここはビルの屋上?

「アスカさん……?」

姿が見えない。
手すりのところから外を見てみると、どうやらここはオレたちがデザイアに入ったビルの屋上のようであった。

(なんで、こんな所に?)

ともかく下へ降りようと、ビルの中に戻るドアへ向かった瞬間。
突然、グォオッという不気味で大きな音が背後に迫ってきて、何事かと振り返る暇もなく、地響きと激しい縦揺れが襲ってきた!

「うッわ、地震だッ! でかッ!」

咄嗟にしゃがみ込んで身構えた。
しかし、激しい揺れはその一撃だけでウソのように収まってしまった。

(なんだ今のは? ん? ……でも、なんかやけに暗くないか?)

不審に思いながら振り返ったあの瞬間。
目にした光景を、オレは一生忘れないだろう。



( ……き、 巨 人 だ ! )



その正体はすぐ分かった。


( ア ス カ さ ん ! )



聳え立っていたのは、巨大化したアスカさんだった!
それも、周囲のビルが膝にも届かないほどの、大、大、大巨人!
さっきのは、この巨大なアスカさんが大地に降臨した衝撃だったのだ!

「なに……これ……ウソだろ。 ……ちょ、マジで!?」

この瞬間、アスカさんの「趣味」がオレの想像を遥かに凌駕したものであることを知った。
いや、「知った」なんてレベルじゃなく「思い知らされた」と表現すべき、大ショックであった。

オレはこわごわと、アスカさんを見上げた。
しかし、その格好はブッ飛んでいると言うほかない凄まじいものだった。
ブラックとパープルでまとめられた、光沢も艶かしいコスチューム。
ピチピチのスーツはボディラインを際立たせ、大きくカットされた胸元からは深々とした谷間が覗き、脚の部分は超ハイレグになっていた。
そして脚にはロングブーツ、手にはロンググローブという鉄壁のコーディネイト。
さらに、コスチュームと同系色のアイシャドーが印象的なメイクが、冷たく鋭く厳しい表情を演出していた。
いつもの「お茶目なお姉さん」らしさなど、欠片も残っていなかった。
そこにあったのは、セクシーとバイオレンスが徹底的に強調された妖艶な美女の姿であった。
まるで戦隊モノの悪の女幹部を彷彿とさせるような……

そんなアスカさんが、超高層ビル級の巨人になって聳え立っていたのだ。
足を肩幅に開き、両手を腰に当てて堂々と胸を張り、獲物を見るような視線で街を見下ろしている。
その迫力と威圧感は、禍々しい漆黒のオーラが見えるほどであった。


 遠くを見渡していたアスカさんが、チラッとこっちを見た。
屋上のオレを見つけると、刹那のあいだ表情を緩ませてウインクしてくれた。
それなのに、これまでのあまりにも衝撃的な事態に狼狽えていたオレは、咄嗟に何もすることができなかった。
固まったままのオレにアスカさんは少し表情を曇らせたが、再び意を決したように冷酷な女幹部の顔に戻ってしまった。

(しまった……)

アスカさん、あんなに気にしていたのに!
どうしてオレは、今ここでアスカさんを安心させてあげることができなかったんだ!
慌てて大きく手を振ってみたけれど、時既に遅し。
オレは、今のアスカさんから見れば指先にも満たないコビト。
もう、気付いてもらえなかった……

取り返しが付かないことをしでかしたという後悔が襲ってきたが、もはやオレにはどうすることもできなかった。
なすすべもなく、聳え立つアスカさんを見上げることしかできなかった。
圧倒的に巨大なその姿は、本能的な恐怖心を駆り立てるものだった。
しかし、オレが感じていたのはそんな恐怖だけではなかった。
あれだけ挑発的なコスチュームなのだから当然とも言えるが、アスカさんはいつも以上に美しく見えたのだ。
いや、コスチュームのせいだけじゃない。
何と言うか、オレはこのとき既にアスカさんの「巨大さ」に対して、ゾクゾクするような、形容し難い魅力を感じていたのだ。

しかし、オレに見とれている暇は与えられていなかった。
アスカさんの「物を壊す」行為が、今まさに始まろうとしていたのだった。
眼下の街を得意気に一瞥したアスカさんは、右手を指先まで伸ばして狙いを定め、そこから激しい雷撃を放った!
見るからに禍々しい紫色の稲妻がオフィスビルに直撃し、大爆発が起こった!
目の眩む光、耳をつんざく音、焼けつく熱気が一挙に襲来し、オレは反射的に顔を背けながら耳を塞いでしまった。

数秒後、爆発のあった方角を恐る恐る見てみると、ビルは上半分が跡形も消し飛んでドス黒い煙を立ち昇らせていた。
アスカさんは右手を伸ばしたまま微動だにしなかったが、無惨な破壊の様子を見届けると、聞いたこともないような声で高笑いを始めた。

「クックック……アハハ、アハハハハハハハハ!!」

街じゅうに哄笑を轟かせながら、今度は雷撃を四方八方へ乱射し始めた!
ビルが次々に粉砕され、破壊音が響く。
映画かアニメか、あるいは遠くの国で起きている戦争のニュースか。
とにかく映像でしか見たことのなかった凄まじい光景が、リアリティを持って目の前に展開されていた。
アスカさんの言った通り、確かにサバゲなんかとは桁違いの有様だった。

そこかしこから悲鳴が上がり、道路は車道も歩道も関係なく逃げようとする人とクルマで溢れかえった。
誰もが、突如現れた女巨人から少しでも早く遠くへ逃れようと、パニックになっていた。
だが、アスカさんの攻撃はどんどん激しさを増していった。
絶え間なく放たれる雷撃で街の外周部を舐めるように破壊し、幾重もの炎の壁を立ち上がらせて完全に人々の逃げ道を奪ってしまった。
オレを含めた数万人は、駅前を中心とした直径1キロ弱のエリアに取り残されてしまった!
かなりの広さのように思えても、これはアスカさんにしてみれば半径たったの数歩……

人々を完全に包囲したことを確認すると、アスカさんは冷酷な笑みを浮かべながら手のひらに巨大な火球を生み出した。
直径十メートルはあろうかという、青紫色の炎が渦巻くそれを、勢いを付けて地上へ投げつける!
着弾点はかなり離れていたが、これまでの雷撃とは比較にならない激しい閃光、衝撃波、轟音、激震が次々と押し寄せ、駆け抜けていった。
オレはうずくまったまま屋上の手すりに掴まり、必死に耐えるので精一杯だった。
立ち昇ったキノコ雲を見上げるまでもなく、あれの直撃を受ければ瞬時の消滅あるのみであることは明白だった。
たった一撃で少なくとも数千人を消し飛ばしたというのに、アスカさんはクスッと鼻で笑うだけであった。
そして、両手に次々に同じ火球を作りだしては、街を猛爆していった。

雷撃と火球でズタズタに破壊された街を、アスカさんはさらなる灼熱地獄へと変えていった。
大きく息を吸い込み、口から極太の火柱を吐き出す。
あまりの超高温でプラズマ化したジェットが直撃した高層ビルは瞬時に赤熱して、
ドロドロに融けた鉄骨やコンクリートの雨を人々の頭上に降り注がせたのだった。
ほんの数秒で、ビル本体も飴のように歪みながら崩壊していった。
ビルの中に取り残され、あるいは崩壊に巻き込まれ、赤黒く流れる溶岩に呑み込まれる人々の最期は、想像するまでもなかった。

阿鼻叫喚の最中、どこからともなく何機もの大型ヘリコプターの爆音が聞こえてきた。
しかし、アスカさんは両眼から強力なレーザービームを放ち、一瞬でそれらを焼き払って撃墜した。
僅かに残った黒焦げでボロボロの残骸が、地上に落下していく。
アスカさんに蹂躙されていくこの世界には、空にだって逃げ場がないことが見せつけられた。
余勢を狩って、ビームで街をぶった切っていくアスカさん。
焼き切られたビルの上部が、剣豪の斬撃のようにゆっくりと滑り落ちていった。


アスカさんの攻撃はとにかく多彩で、しかもその全てが圧倒的なパワーを誇示していた。
数分と経たずに、オレたちを包囲する炎の壁の内側は、世界の終わりのような惨状へと変わり果てていた。
跡形もなく破壊されたビルは赤熱した瓦礫の山となり、一部は溶岩となって流れ出している。
あちこちに口を開けた巨大なクレーターの中は、一切が消滅して大地が剥き出しになっていた。

これだけの大破壊を、アスカさんは最初に降臨した場所から一歩も動くことなくやってのけてしまったのだった。
しかし、ついに大地を踏みつけていた巨大な足がゆっくりと持ち上がり、高々とかかげられた。
それだけの動きで、腹の底に響くような重低音が轟いてくる。

(……軽く足を上げただけで、ビルより高いなんて!)

そして、誰もが予想した最悪の展開が始まった。
逃げ場を失って右往左往するだけの人々に対して、アスカさんの肉体による圧倒的な直接物理攻撃が開始された。
一歩ごとに地響きを轟かせながら足下のビルや住宅をまとめて踏みつぶし、あるいは無造作に蹴散らしていく。
アスカさんから見れば小指の先よりも小さな相手に対して、それはあまりにもオーバーキルだった。

鉄道の高架橋も一蹴で破壊され、巻き添えになった電車を蹴り飛ばされた。
数両が繋がったまま吹っ飛んだ電車は、恐ろしい勢いで転がりながら人家を薙ぎ倒していく。
ビルに引っかかってようやく止まったときには、もはや原型を留めぬほどグシャグシャに捻じ曲がってつぶれ、無惨な姿と化していた。
アスカさんはそのまま高架を壊しながら進み、たった数歩で駅、つまりオレの目の前へ到達した。
凄まじい歩幅で近づいてくるその姿は、一歩ごとにますます大きくなっていくように見えた。

(デカい! デカ過ぎるよ……! なんて巨大なんだ……)

もはや、垂直に近い角度で聳え立つアスカさん。
たった2回の足踏みで駅舎とホームを粉砕し、続いて9階建ての駅ビルを掴んで持ち上げようとした。
巨大な指で外壁を突き破り、ビルを半ば崩壊させながらも強引に引きちぎって、頭の上まで高々と持ち上げた。

こぼれ落ちてくるコンクリートの塊や鉄骨が、オレのすぐ近くにも降り注いできた。

(うわっ……!)

アスカさんにとっては小さなゴミかも知れないが、これが一つでも当たればオレは即死だ。
デザイアの中だから大丈夫だと分かっていても、重量物が唸りを上げて落ちてくるのは、やはり恐ろしい。
それなのに、アスカさんはオレの事など気にも留めずに乱暴にビルを振り回し、殺人的な大きさの瓦礫を撒き散らし続けた。
そして、大きく振りかぶり、まだ破壊されていない街へ向かってそれを投げつけた!
駅ビルだった塊は衝突点の街をえぐるようにして砕け散り、ぐしゃぐしゃに混じり合った瓦礫の山と化した。


地獄変の街に、全ての元凶であるアスカさんの高笑いがこだまする。
大破壊をかいくぐってきた人々も、次第に狭まってゆく猛火の波から逃げ惑ううちに、アスカさんの足元という最悪の危険地帯へと追い詰められていく。
そんな彼らへ、アスカさんは容赦ない蔑みの言葉を投げつける。

「アハハハ!……逃げることすら満足にできないのかしら? 愚かでひ弱な生物は、踏みつぶされて滅びなさい!」

こう死刑宣告をすると、アスカさんは巨大な足を振り上げ、今度はビルの巻き添えなどではなく明確に「人間を狙って」踏みつぶした!

(ひいっ……!)

一瞬で何十人もが巨大なブーツの下敷きになり、断末魔の悲鳴の途中で踏みつぶされた。
さらに追い討ちをかけるように、アスカさんは膨大な体重をかけてグリグリと荒々しく踏みにじる。
辛うじてブーツの直撃を免れた人々も、幸運に安堵するまもなく巻き込まれて擂りつぶされてしまった。

アスカさんが人々を蹂躙した足を持ち上げる。

(あ、あの下には……!)

無惨に引き千切られた圧死体と血の海を想像して慌てて顔を背けたが、それでもやはり恐る恐る見てしまっていた。
しかし、巨大な重量で陥没した足跡の底には粉々に割れたアスファルト舗装の残骸があるだけで……

(え……誰もいない!? なんで? ……そうか、アスカさんが「そうしている」んだ!)

アスカさんがデザイアを「そのように設定している」ことに、オレは気が付いた。
そういえばこれまでも、死体はもちろん苦しむ負傷者の姿すら見かけたことはなかった。

(そうか、アレと同じなんだ……)

オレは、例のデザイアのサバゲで頭を撃たれたときのことを思い出していた。
あのときも、血と脳漿をぶちまけるようなグロシーンにはならなかった。
オレは硬いもので叩かれたような衝撃とともに地面に倒れ、身体を動かせなくなっただけだった。

アスカさんは巨人となって街を破壊する爽快感が好きなだけで、残酷なものは見たくないんだ!
アスカさんは、オレの知ってるアスカさんのままだった。
そうと分かったオレは、これまでよりも遥かに安心して街が蹂躙されていく様を見ていられるようになった。


巨大過ぎるアスカさんは、せわしなく歩き回って人間を追いかける必要などない。
巨人らしく悠然と、その場でゆっくり足踏みをするだけで、爪先から踵まで20メートルを優に超えるハイヒールブーツが襲いかかるのだ。
ロックオンされたら最後、逃げることなど不可能であった。
ザクザクという表現がぴったりなほど、あっけなく、そしてなすすべなく、大勢の人々が踏みつぶされていった。
繁華街の狭い路地に逃げても無駄であった。
アスカさんが軽く足を伸ばせば、周囲の雑居ビルごと彼らを踏みつぶせるのだから……

地下街も膨大な体重で踏み抜かれ、至るところが崩落していた。
逃げ込んだ人々は、頭上から響く巨人の足音におびえ続けた後……
突然飛び込んでくるブーツで直接踏みつぶされるか、落盤に押しつぶされるかという運命であった。

固いブーツの靴底で大勢の人々が蹂躙されていく地獄から、ふと目を上に向けると、思わず見とれるほどの天国の光景が展開されていた。
巨大なふとももやお尻がぶるんぶるん、さらに上空では小山のようなおっぱいがゆっさゆっさと、艶かしく揺れ動いていた。
アスカさんの一挙一動が、頭上で女性らしいエロスを醸し出すのと同時に、足下では恐怖の悲鳴と断末魔の声を立ち上らせる。
異常過ぎるコントラストだった。


人々が追い立てられてきた駅前広場は、隙間なくアスカさんに踏みにじられ、巨大な足跡で埋め尽くされていった。
残り少なくなった生き残りは散り散りになって逃れようとしたが、それも絶望的な抵抗であった。
アスカさんの「足跡」そのものが、彼らの行く手を阻んでいたのだ。
足跡の中はブーツの靴底の凸凹が刻みつけられて激しい起伏の連続になっており、遅々として進めなかった。
しかも、陥没した足跡の縁は2メートル以上もそそり立つ壁になっていた。
アスカさんは自分の足跡の中で悪戦苦闘する無様な人間たちに失笑しながら、彼らを次々と踏みつぶしていった。

それでも、体力と幸運に恵まれた一団の人々がついに最後の壁を登りきって、こっちへ駆け出そうとしていた。
しかし、広場の反対側を掃討していたアスカさんはそれに気がつくと、

「小癪ね……」

と言うが早いか、たったの一歩で数十メートルの距離を詰め、彼らを踏みつぶすための足を高々と掲げた。

(うおお、お……!?)

オレは、自分のいるビルごとアスカさんの足の影の中に収まってしまっていた。
巨大な靴底が完全にこちらをロックオンしていた。

(え? ちょ、アスカさん……?)

アスカさんはオレに気付くことなく、真っ直ぐにブーツを! ブーツを! うわあああ……!!


「カキッ☆」

硬い音が響き、地面が大きくグラリと揺れた。

(……!?)

うずくまったままの姿勢で目を開けると、目の前わずか数十センチのところに巨大なブーツの靴底があった。
まさに寸止め、間一髪だった。

(……た、助かったのか!?)

爪先から踵へと立ち上がる曲線が、急激に角度を変えながらピンヒールに繋がっていた。
何かのモニュメントのような壮麗ささえ感じる美しさだったが、これは数千人を踏みつぶしてきた元凶なのだった。

それがフワッと上空へ遠ざかると、入れ替わりに慌てた表情のアスカさんがしゃがみこんで来た。
巨大なふとももが折り畳まれながら上半身がグオォッと迫ってくる迫力に、たじろいでしまう。

「ごめ〜ん、裕也クンこのビルだったんだー。大丈夫? 怖かった?」

大丈夫なわけないじゃないですか。
しかし、答えようとしても口の中がカラカラに乾いていて、言葉が出てこない。

「間違えて裕也クンを踏みつぶしちゃわないように、バリアを張っといたんだ」
 片膝を突いたアスカさんは、ビルに覆いかぶさるように背中を丸めてオレの方を覗きこんでいた。

左を見ても右を見ても、ピチピチのサイハイブーツに包まれた直径十五メートルものふとももが視界を占領していた。

(これが、あの凄まじい破壊を引き起こした脚……なんて巨大なんだ!)

ブーツの最上部からは、十数メートルにも渡って生脚が露出している。
その広大過ぎる「絶対領域」の奥には、超ハイレグのボディスーツが食い込んだ巨大な股間が鎮座していた。
上を向けば、空を覆うように聳える上半身から、山のような巨乳が張り出している。
とにかく、息を飲むばかりの荘厳にしてエロティックな光景だった。

黙ったままのオレを、アスカさんはいきなり親指と人差し指でつまみ上げた。
猛烈な加速度で目が回り頭がくらくらとなったが、ともかくオレはバレーボールコートサイズの手のひらに乗せられた。
目の前に、アスカさんの巨大な顔が迫る。
オレなんか一飲みにできそうな口が動いて……

「ごめん、ホントにごめんね♪ でも良かったー、何ともないみたいで」

至近距離から、頭にぐわんぐわんと響くほどの大音量を浴びせられた。
一単語ごとに風がドドッと押し寄せてくる。
なんかもうオレは少し頭に来て、精一杯の大声を張り上げて叫んだ。

「何やってるんスか! これ! ホントもう!」

思いがけないオレの怒声に、アスカさんの巨体がビックンと大きく震えた。
手のひらの上のオレもよろけてしまうのが悲しい。
だが、ちっぽけなオレが、巨大なアスカさんを狼狽えさせていたのだ。

「えーと、その……大魔王サマ、ごっこ……かな?」

最上級の決まり悪さでつっかえつっかえ白状したアスカさん。
なんと、悪の女幹部じゃありませんでした。
もっとずっと上の「大魔王様」でしたか、さようでございましたか……って、そんなことはどうでもいい。

「……この状況を、もう少し分かるようにご説明頂けますかね? アスカさん」

いつの間にかNPC、つまり街の人々は消え去って、世界はアスカさんとオレだけになっていた。
だが、もし第三者が見ていたら、このシュールな光景をどう思っただろうか?
巨大なアスカさんが、手のひらの上の小さなオレに向かって消え入りそうな声で釈明をしていたのだ。

アスカさんの話は、普段の威勢の良さからは考えられないほど歯切れが悪く、回りくどくなっていた。
しばしの沈黙の後、オレは少し呆れたような口調で総括した。

「するとなんですか、デザイアの中で『大魔王アスカゾーラ』になりきって大暴れするのが好き、ということですか?」
「えっと……それはちょっと違ってて……」
「何が違うんですか?」
「……いやでも、うーん……やっぱりその通りです。ハイ」

なんと、これがオレの同居人兼恋人兼「姉」である小嶋明日香さん(24)の秘密の趣味だったのだ!

「アスカさんの仰った通りでした。
 なんというかまあ、はっきり言わせて頂けば、完全にオレの想像を超えてましたね……」
「びっくりさせちゃって、ホント、ホントにゴメンね!
 でも、裕也クンとずっと一緒に暮らしていくなら、これはいつか言わなきゃいけないと思ったから……
 それで、いつもやってる通りのことを見せてあげたんだけど……」
「ええっ!? 『いつも』やってたんですか!? こんなこと!」
「いや、その……」

またしても間の悪い沈黙。
しかし、今度はアスカさんの方がそれを破った。

「で、……どう、だった?」
「と言いますと?」
「その……全部というか……巨大な私が街とか、破壊してるの」

緊張した巨大な顔が、小さなオレを見つめている。
さっきまで無敵だったアスカさんとのパワーバランスが、今や完全に逆転しているのだ。

その様子を見て、オレはちょっとだけアスカさんを困らせたくなった。
ニヤニヤしたくなるのを隠して、わざと冷淡な調子で切り出した。

「はっきり言えば、ドン引きですね」
「ええっ、そんなぁ……」
「でも」
「…でも?」

ちょっと間を置いた。
アスカさんは泣きそうな顔で、だが期待を込めて、オレの次の一言を待っていた。

「でも、その……アスカさん、カッコ良かったです」
「……!」
「カッコ良いというか美しいというか、巨大なアスカさんに……ちょっと、萌えました」
「ホント!?」
「この状況で嘘や冗談は言いませんよ。
 あと……エロかったですよ、その、『アスカゾーラ様』は」
「じゃあ、じゃあ、こんな私でも裕也クンはオッケーしてくれるの?」

オレはアスカさんの巨大な瞳をまっすぐ見つめ、大きく頷きながら力強く答えた。

「……ええ。そりゃもちろん。だって、アスカさんを拒絶できるわけないじゃないですか」
「わーい! やったー!」

このときアスカさんが見せた心の底から安心したような表情は、今でも忘れられない。

「何というか、無敵の巨人になって『物を壊す』なんて、最高のストレス解消というか、気持ち良さそうだなって思いました」
「そう! メッチャ楽しいんだよ! ……ならば、うふふ♪」

アスカさんは再び指でオレをつまんで元のビルの屋上に戻し、グオオッと風を巻き起こしながら真っ直ぐ立ち上がり、オレの前に聳えた。
ニヤニヤしながら、こちらを見下ろしている。

「あ、あの、アスカさん? 何か良からぬこと考えてません?」
「ふふーん、べーつに~♪」

意味深な笑顔で否定したが、何か企んでいることはあまりにも明白だった。
オレの本能が、危険が迫りつつあることを察知していた。

「こら、逃げちゃだ~め♪ じっとしてなさい。狙いが定まらないじゃないの!」
「狙いって……やっぱり変なことするつもりじゃないッスか!」
「大丈夫よ痛くないから♪ ちょっと裕也クンにも巨大化してもらうだけだから♪」
「え……!!」
「裕也クン裕也クン、おーきくなぁれ、っと!」

アスカさんの指先からまばゆい光がほとばしり、オレを直撃した。

「うおッ!?」

オレの身体がグワァーッと膨張していく!
服が身体を締め付けたが、すぐにビリビリと裂けてしまった!
ジェットコースターに乗ったのと少しだけ似ているけど、形容できない未体験の感覚がオレを襲う。
全身の血が沸き上がり、力が漲っていく。
急に眩暈がしてガクッとへたり込んだ瞬間、既にかなり巨大化していたオレの尻が、何かの機械を押しつぶした。
屋上に置かれていた業務用エアコンの室外機だったろうか?
しかし、それを確かめる間もなく周りの景色が大きく歪みながら縮んでいき……オレは意識を失った。


「裕也クン? 裕也クン? 大丈夫……?」
「え……? ううっ……」

気がつくと、心配そうなアスカさんの顔が真っ先に目に入った。
オレは、アスカさんに膝枕されていた。
何とも言えない心地よさで、いつまでもこうしていたい……

(はっ……! オレ、巨大化して……!)

がばッと起き上がると、オレはもうアスカさんと同じ位の巨人になっていた。
下がザラザラすると思ったら、自分がいたビルを尻で完全に押しつぶしてしまっていた。
着ていた服は巨大化したときに破れてしまったが、今はまたボクサーパンツのようなものを穿かされていた。
アスカさんが用意したものなのだろう。
ブラックとパープルのカラーリングはカッコ良いし、アスカさんともお揃いだから嬉しいけど……
超薄手、ローライズ、ピチピチ、テカテカというそれは、申し訳程度に股間を隠していても明らかに性器をアピールするためのものであった。
股間の膨らみはミシミシという音が聞こえてきそうなほどに、いやらしく張り詰めていた。
この中に、人間から見れば巨大な陰茎と陰嚢がずっしりと格納されているのだった。
股間ばかりに気を取られていたが、オレの腕や脚の素肌にはミステリアスな紋様が刻まれていた。

「ふふふ、裕也クンも巨大な魔王サマになっちゃいました♪」

自分の身体を見回しているオレに、アスカさんが悪戯っぽく囁いてきた。
そう、これが大魔王に変身させられたオレの姿であった。


しかし、大魔王たる者がいつまでも女の膝枕というのは少々格好が付かない。
オレは立ち上がろうとしたが、その瞬間、自分の視界があまりに高いことに驚いて足がすくんでしまった。
何と言うか、自分の身体なのに自分の身体ではないような感覚だった。
アスカさんに手を差し伸べられてようやく立ち上がる姿は、膝枕よりよほど無様だった。
バツの悪そうなオレを見て、アスカさんはフォローを入れてくれた。

「私も最初はこんなだったから大丈夫。きっとすぐ慣れるから♪
 それよりもどうかしら? 巨人になった感想は?」
「え……、どうって……」

アスカさんの手をしっかり握ったまま、オレは周囲を見渡した。
オレたちの住んでいる見慣れた街は、既にアスカさんによってほとんど壊滅させられていた。
その中に、オレはいま第2の巨人として聳え立ったのだ。
想像したこともない光景だった。

「裕也クン、私たちがどれくらい大きくなってるか、分かる?」
「え? いや、ちょっと想像も……」
「今の裕也クンはね、身長172メートル。私も身長160メートル。
 うふ♪ ちょうど100倍に巨大化したんだよ♪」
「100倍……」
「凄いでしょ? 巨大ロボとか巨大ヒーローとか巨大怪獣とかより、ずっとずっとおっきいんだよ♪」

無敵さの象徴であるそれらを遥かに凌ぐ大きさ。
そして、ミニチュアセットの中に立つのともタワーの展望台から眺めるのとも違う、ちっぽけな街を見下ろす感覚。
これが「巨人になった感じ」なのだろうか?

「なんだか、不思議な感じッスね……」
「ふふ、そうよね。でも、ただ立ってるだけじゃつまらないよ♪」

アスカさんはそう言うとオレの手を離し、ズシンズシンと地響きを立てながら離れていってしまった。
たったの数歩で、500メートル以上の距離ができてしまった。

「ここまで歩いてみて!」
「ええっ!」

恐る恐る、オレは巨人としての第一歩を踏み出した。
怖いからなるべく足元を見たくないのだが、瓦礫が散乱した地上はどうしても足元を確かめねばならなかった。
だが、巨大な足が収まりそうな空間はどこにも見つからなかった。

「もー、何してるの? 裕也クンは巨人なんだから『ズシンッ』って踏みつぶしちゃえ!」

アスカさんの言葉がオレを焦らせる。
少し躊躇したのち、仕方なく乗り捨てられたクルマに足を乗せてみた。
踏みつぶしてしまうとは思っていたが、それにしてもそれは、あまりにもあっけなくつぶれてしまった!
クシャリと……まるでアルミホイルでできているかのようだった。
自動車を踏みつぶしたオレの足音は、アスカさんと同じ地響きになっていた。
いや、アスカさんより一回り大きく、パワーならそれ以上のオレの方が、破壊力では上回るのだろう。

オレの足は、大通りの片側3車線を完全に占領していた。
路面には、先に通ったアスカさんのブーツの巨大な足跡が刻みつけられていた。
自動車も中央分離帯も、全くお構いなしに踏みつぶされていた。
足跡をたどった先にいるアスカさんを見ると、高層ビルの屋上に手を付いて片足を上げ、ピンヒールで串刺しになったクルマを抜きとっている最中だった。
取ったクルマは指先で丸めるように揉みつぶして、ポイと投げ捨てる。
この巨大女魔王は、何気ない所作で人間から見れば物凄いことをやってのけているのだった。


オレはふらつきながらも一歩ずつ進んでいたが、最後の最後でよろけてしまって、
アスカさんの胸に飛び込むような形でのゴールインになってしまった。

「きゃっ♪」
「ご、ごごごめんなさい!」
「うふふ、いいのよ♪ うん、レッスン1は合格ね!」
「え、レッスン1……って?」
「続いてレッスン2!」

アスカさんは得意のスルースキルでオレの質問をすっ飛ばし、ノリノリの女性インストラクターのようになっていた。
コース名は「巨大魔王入門」とでも言うべきか……
そんなアスカさんがパチンッと指を鳴らすと、再び足元にたくさんの人々が現れた!
彼らは2人に増えた大巨人に悲鳴を上げながらバラバラと逃げ始めた。

しかし、この高さでほぼ真上から見下ろすと、人々はほとんど頭しか見えなかった。
小さな黒や茶色の丸いものが、ゆっくりと離れていく。
どうやら懸命に走っているらしいことは察せられたが、それはじれったいほど遅々としていた。

「さ、やってみて!」
「やってみてって……何を、ですか?」
「決まってるじゃなーい。私たちは無敵の大魔王で、しかもこーんなに巨大なのよ?
 虫ケラみたいな人間どもはこうやって……」

アスカさんは軽く足を伸ばし……
ズシィィィン……!
これだけでまた、数十人が踏みつぶされてしまった。

「……ふふっ、簡単に踏みつぶしてしまえるのよ。
 ほらほらー、のんびりしてると人間どもが逃げてしまいますわよー?」
「ひぃぃ……分かりました、分かりましたよ」

オレは逃走する集団の最後尾に狙いを付けた。
まだ少し覚束ない足取りのオレでも、たったの一歩で簡単に追いつけてしまうのだった。
踏み下ろした足指のすぐ側では、人々の動きが止まっていた。
恐怖のためか、それとも巨人が引き起こした地震のためか、とにかく動けなくなっていたのだ。
あーあ、ここで止まったらヤバいのに……
オレは構わず、いよいよ彼らを踏みつぶすために足を振り上げた。
しかし、100分の1サイズとはいえ、十分に人間だと判別できる相手を踏みつぶすのは、やはり躊躇してしまう。
相手がデータ上の存在に過ぎないNPCだと分かっていても、自分と同じ姿形の人間だとどうしても決意が鈍ってしまうのだった。

しかし、オレを見上げて怯えたり平伏したりしている彼らの姿を見ると、別の感情が頭をもたげてきた。

(オレに向かって、命乞い……? こんなに泣き叫んで……そうか、コイツらはもうオレを「人間」だなんて思っちゃいない……オレは大魔王なんだ!)

次第に、オレの精神が邪悪な思考に染まっていく。
今のオレは偉大なる魔族の長。
人間どもは絶滅させるべき敵ではないか。
何を躊躇うことがあろうか?

そのとき、オレの中で何かが吹っ切れた。
命乞いをする哀れな下等生物たちを女魔王「アスカゾーラ」と同じ冷酷で嗜虐的な視線で見下ろしながら、今度は躊躇なく踏みつぶした。
素足の裏で、いくつもの卑小な人間どもがつぶれる感触があった。
やってみれば、実にあっけなかった。
足を上げてみても、やはり醜い圧死体は無かった。
それが分かってしまうと、数十匹の人間を踏みつぶしたというのに、オレの心にはジワリと高揚感が込み上げてきた。
体だけでなく心までも魔王になりきることができた瞬間だった。

アスカさんはご満悦だった。

「うふふ、無慈悲な巨大魔王サマの誕生……素晴らしいわ!
 でも、まだまだ人間どもはたくさん残ってるわ。
 どんどん踏みつぶして、絶滅させましょ!」

迷いが消えたオレは、この巨体の扱いにもすっかり慣れてきた。
のろのろと逃げる人間どもに圧倒的な歩幅で追いつき、足を振り上げて、踏み下ろす。
難しいことなど何もない。
アスカゾーラも蹂躙劇に加わって、街は4本の巨大な足が間断なく襲いかかる凄惨な修羅場と化した。


「ふふふ、じゃあ最後のレッスンね!
 大魔王サマ、あのビルを破壊してください。 人間どもの巣窟ですわ!」

アスカさんが指差した先は、この街で一番高い複合ビルだった。
下が商業施設で上がオフィスやホテルになっている40階建てのツインタワーは、今のオレたちとほぼ同じ高さがある。
街がほぼ破壊し尽くされた中で無傷で残っていた、いや「残してあった」メインディッシュだった。
オレはもう道路など関係なく、中小ビルやその瓦礫をザクザクと踏みつぶしながら、アスカさんと一緒にターゲットに向かって進む。
よく知っている街の距離感が100分の1になり、自転車や徒歩で数分だった道のりがたったの数秒、数歩に変わっていた。
この圧倒的な変化からも、オレは巨人になった実感を掴んでいた。

タワービルに相対すると、オレは両手を腰に当て、魔王らしく悠然と獲物を上から下まで眺め回してやった。
ガラス張りの最上階には、アスカさんと一度だけ来たことのある展望レストランがある。
あそこからの街を一望する夜景は実に素晴らしかった。
しかし今、あのときよりも一段高い視点から街を見渡すオレの目に映っていたのは、変わり果てた街の姿だった。
美しく活気があった街は徹底的に破壊し尽くされ、灰燼に帰していたのだった。

両手を鷲掴みの形にして、黒く尖った魔王のツメでビルに襲いかかった。
重機よりも遥かに巨大で強力なものになったオレの指は軽々と外壁を突き破り、ビルの奥深くまでを手の中で握りつぶして破壊した。
人差し指を横に滑らせて、人間だったときの想い出を断ち切るかのようにレストランも破壊した。
テーブルや椅子が木屑となって遥か下方へ舞い散るように落下していく。
さらに乱暴に腕を突っ込んでビルの中を掻き回し、そのまま貫通させてやる。
巨大な拳で殴りつけて数フロアを一気に粉砕する。
時折、オレの指や腕が人間を跳ね飛ばしたり押しつぶしたりする感触もあったが、もはやそれは快感でしかなかった。

しかし、まだまだオレは魔王として経験不足であった。
手の届きやすい中高層階ばかりを破壊したために、支え切れなくなった上部が先に崩れ落ちてしまったのだ。
崩落が止まって中途半端に残ったビルの姿は、どうみても魔王の破壊劇としては美しさに欠けていた。
アスカさんのように大胆に破壊するのが正しかったのに、オレはチマチマし過ぎていたのだ。

失敗に少し苛立って低層階に爪先を蹴り込むと、残ったビルの全体がグラリと傾いた。
それでもしぶとく倒れなかったので膝蹴りを加えると、ようやくビル全体が砕け散りながら倒壊してくれた。
とてつもない轟音とともに物凄い土煙が巻き起こった。
しかし、それはミストのような感じで全く埃っぽさはなかった。
これもアスカさんの周到な準備の賜なのだった。

「ちょっと苦戦したみたいだけど、最初にしては良い方よ。
 じゃ、最後はふたりでこっちを破壊しない?」

残ったツインタワーの片方にも死刑宣告が下った。
アスカさんはビルの反対側に回り込み、ビルを挟んでオレと向かい合った。
2人の巨人に包囲された、この街で最後のまともな建造物。
アスカさんは大きく両腕を広げ、全身でビルにもたれかかるようにしてオレの胸に飛び込んできた!

「裕也クン! 来て!」

オレもアスカさんを抱き止めようとしつつ、ビルに向かってなだれ込む。
ふたりの巨体で、タワービルを一気に抱きつぶしてやるのだ!
破壊の最前線となっていたアスカさんの山のような巨乳が、オレの硬い胸板にぶつかった。
ふたりはそのまま腰を押し付け合い、脚も絡ませて、全身でビルを破壊した。
アスカさんとオレが抱き合うのと同時に、ビルは膨大な瓦礫を降り注がせながら完全に崩壊した。

「ふふふ、いっぱい壊しちゃった♪」

アスカさんはそう言いながら、オレのことをギュッと抱きしめる。
オレもアスカさんをしっかりと抱きしめた。
オレたちの間に挟まっていた瓦礫を、さらに細かく擂りつぶしながら……


さっきまで恐ろしい大巨人だったアスカさんが、今はオレの腕の中にいる。
山のようだったおっぱいが、オレの胸に当たっている。
塔のようだった脚が、オレの脚に絡みついている。
不思議な感じだった。

ふたりは燃え盛る火の海の中に立ち、アスカさんは炎に照らされて輝いて見えた。
しかし、紅蓮の炎にも全く熱さは感じられず、ほの暖かなミストのようであった。

(アスカさん、なんて綺麗なんだ……)

オレはアスカさんと唇を重ねた。
最初は軽いキスだったが、興奮したふたりはどんどん大胆になっていった。
ちゅっちゅという音が次第次第に大きくなっていき、死の街に不気味に響き渡っていく。
さらに、アスカさんは舌を差し入れてきた。
人間から見れば、今のオレたちは舌でさえも巨大な怪物。
巨大な口内を二体の怪物が暴れ回り、膨大な量の唾液を交換しあっていた。

オレのペニスは、ローライズのボクサーパンツからはみ出しそうなほど勃起してしまっていた。
アスカさんはディープキスをしていた唇を離すと、悪戯っぽく耳元に囁いてきた。

「ふふふ、裕也クンのココ……熱くなってるよ♪」

滑らかなグローブに包まれたアスカさんの指が、オレの股間に優しく触れながら撫で上げる。
野獣の本性を剥き出しにしたオレの股間の怪物は、ビキビキと蠢いて悦びを表現した。
アスカさんはしなやかに指を往復させて巨大な怪物を更にいきり立たせてから、ボクサーパンツに手を掛けてゆっくりと引き下ろした。

 ぼるんっっっ!!

15メートルもの巨龍が、その姿を現した。
既に最大硬度に達していたモンスターは、天に向かってそそり立ちながら涎を垂らしていた。

「うふふっ、裕也クンのおちんちん怪獣、こんなに大きくなっちゃって……
 でも、このアスカゾーラ様から見ればやっぱりカワイイかな♪」

指先で、赤黒く怒張した亀頭をツンツンと刺激する。

「くはッ……ちょ、やめてくださいよ……」

アスカさんは、いつの間にか手に観光バスのようなものを掴んでいた。
一旦オレの目の前にそれを見せてから、ペニスと並べて大きさを比べるようにして、また耳元で囁いた。

「……分かる? 今の裕也クンのおちんちん、バスよりもおっきいんだよ?」

そう言いながら、二本の指でつまんだバスをオレのペニスの上で走らせた。
まるで、子供がミニカーを動かすように。
カリの段差を乗り越えて、亀頭を刺激する。
尿道口に前輪が嵌り込みそうになる。
陰毛の叢に後部を突っ込ませる。
裏筋を這っていく間、バスのタイヤから伝わってくる微妙な感触がくすぐったくてたまらない。
しかし、乱暴なアスカ運転手に扱われたバスはすぐに車軸が折れて、走れなくなってしまった。

「あらあら? 弱っちいわねぇ。
 えい、ちびちび車は怪獣おちんちんでスクラップにしてやる~」

アスカさんはオレの前にひざまづくと、バスを横にしてそそり立つ剛直の根元に挟み込んだ。
バスはオレの陰毛の中に半分埋もれるように包まれてしまった。
鋼鉄よりも硬いオレの巨大ペニスは、15トンもの重量を支えても微動だにしなかった。
アスカさんは顔を近づけて楽しそうにその様子を覗き込んでいたが、
バスを支えながら指先でペニスの先端を少し押し下げ、カウントダウンを始めた。

「うふふ、3・2・1・ゼロ♪」

アスカさんはパッと指を離した。
ビンッと跳ね上がったオレのペニスは、一瞬でバスの真ん中をグシャッとひしゃげさせた!
その後も、揺れるたびにメキメキとつぶしていく。
バスは千切れこそしなかったものの、への字型に大きく折れ曲がってペニスに引っかかっていた。
オレは、勃起圧のみでバスを押しつぶしてしまったのだ。

「裕也クンも分かってくれたかな?
 圧倒的な力で、思い通りに世界を支配する快感を……」

この世界は、アスカさんの思い通りに動いている。
そして、オレもすっかり巨人であることの虜にされようとしていた。


「じゃあ、頑張ってくれた裕也クンに、ごほうびしてあげる♪」

アスカさんはすべすべのグローブに包まれた巨大な指をペニスに絡ませ、ゆっくりとしごき始めた。
最初の数往復で、つぶれたバスが滑り落ちていった。

「アスカさん……うああっ、あっ! 気持ち良すぎますぅっ!」
アスカさんは上目遣いでオレをチラッと見ると、高飛車な「アスカゾーラモード」でオレを挑発した。
「あらあら、もうイキたくなってしまわれたのですか?
 だめですわ、魔王様でしたらこのぐらいガマンして頂きませんと」

ペニスを擦り上げるアスカさんの手の動きはどんどん速くなっていった。
しかし、オレは魔王の威厳にかけて(?)、襲い掛かってくる快感の波に耐えようとしていた。
「ねぇ、今おちんちんから精液が出たら、どうなっちゃうと思う?」
アスカさんはそう言いながら、空いている方の手のひらをオレに見せてきた。
小さ過ぎて良く見えないが、今度はどうも数十人の人間が乗っているようだった。

「このコたちね、みんな女子高生だよ。一クラスぶんの。」
「……!!」
「このまま裕也クンが我慢できずに、しゃせー、しちゃったら……」

そう言いながら、アスカさんはペニスをしごくスピードを一気にアップさせた。
同時に女子高生たちを乗せた手をリフトアップさせ、ズゴゴゴゴ……と凄まじい勢いで巨大なペニスが擦り上げられていく光景を彼女たちの眼前に突きつける。
巨龍の口は完全に彼女たちに向けられていた。
女巨人の指が男巨人のペニスを一往復するごとに、彼女たちが乗せられている手のひらもグラグラと揺れ動いた。
地上数十メートルの高さ。
落ちれば命は無い。
彼女たちはアスカさんの手のひらの真ん中で肩を寄せ合うしかないのであった。

このとき既に、オレの心は完全に大魔王モードになっていた。
女子高生たちにペニスを見られていても、全く恥ずかしさは感じなかった。
むしろ、その巨大さを見せつけてやりたい気分だった。
彼女たちを哀れむ気持ちは欠片もなく、むしろ射精におびえる時間をできるだけ伸ばしてやりたかった。
だからペニスに力を込め、射精を我慢する。

(まだ……まだだ……もっと恐れおののくのだ……)

しかし、ついにペニスの痺れるような感覚を抑えきれなくなり、オレは押し寄せる快感に身を任せるようにして、射精した!

 ブプ……ドブァァァッ!!
 ドブッ……ドブッ……ドビュル、ドビュルルル!!

アスカさんの黒と紫のグローブが、激しくほとばしる白濁液で汚されていく。
射精の直撃を受けた女子高生たちが吹っ飛び、悲鳴を上げながらアスカさんの手のひらの上を転がった。
逃げ場の無い手のひらの上で、彼女たちは次々と大魔王の精液に蹂躙されていった。

しかし、いつも以上の射精の快感の中で、オレは異変に気付いた。

(と……止まらない!?)

とっくに普段の射精量を超えているのに、一向に止まる気配がないのだ!
精液を噴出するたびにオレの股間の筋肉はますます収縮力を高め、次なる一撃をより激しく射出するのだった。

(い、いくらでも出るぞ!)

オレは面白くなって、射精で吹っ飛ばされて手のひらから落ちそうになっている女子高生を狙って、執拗にブッ掛け続けた。
這い上がろうとするのに2〜3回撃ち込めば、ついに彼女は長い悲鳴を上げながら糸を引く精液と一緒に墜ちていく。
そんな殺人射精が20回、30回、いや、もっとだろうか?
オレはアスカさんの手のひらを精液でいっぱいにし、半分ぐらいの女子高生を墜落させたところで、ようやく果てた。


「ふふふ、魔王サマ、たくさん出しましたね……」
「ハァハァ……アスカさん、これ……何かしたでしょ?」

アスカさんは答えなかったけど、今のオレは答えを知っている。
エロゲの主人公のような大量射精ができるように、アスカさんがこっそりデザイアの設定を変えていたのだ。
墜落を免れた女子高生たちは、腰や肩まで精液に浸かりながら必死にもがいていた。

「あーあ、魔王サマがガマンできずにイッちゃったから、
 人間の女の子が、みんなせーえきまみれになっちゃいましたよ?」
「ア、アスカさんが気持ち良くしたから……」

アスカさんはそれには答えず、じっと女子高生たちを見つめていたが……

「ふふふ、見ていてください、そろそろ効いてくる頃ですわ」
「え? ……効いてくるって?」
「ご覧ください。大魔王サマの精液の素晴らしい力を!」

立ち上がったアスカさんが、手のひらの精液をオレに見せた。

「……!!」

なんと、ただでさえ小さかった女子高生たちが、心なしかもっと小さく……いや、明らかに縮み始めていた!
見る見るうちに彼女たちはどんどん縮んで……ついには、ほとんど見えなくなってしまった!

「精液に込められた魔力が、人間どもをさらに縮小してしまったのですわ」

いまや、精液の「湖面」から辛うじて出ているゴミのような点の一つ一つが、女子高生の頭なのだ。
周囲に比較物の無い彼女たちから見れば、自分が縮小されたというよりも、むしろ逆に巨人たちがさらに巨大化したように感じられるのかも知れない。
大量とはいえ一応は背が立つほどだった精液は、みるみるうちに底無し沼になり、池になり、ついには湖のように広がってしまった。
重い粘液の湖水の中には、頭の膨らんだ白いウナギのような精子が無数に蠢いて……彼女たちに群がっていたのだ!

精液湖の岸辺からは、さっきよりも遥かに巨大になったアスカさんのグローブに包まれた指が、五本の黒い巨塔となってそそり立つ。
上空には、そんな超巨大な指よりも更に二回りも太くて長く、この白い湖水と何十億もの怪物精子の全てを吐き出したオレのペニスが、威容を誇っていた。
しかし、それらだってオレたちの身体のほんの一部でしかないのだった。
せせら笑って聳え立つオレとアスカさんの全身は、縮小女子高生たちから見れば、もはや霞んで見えるほどの巨大さであろう。
精子たちに犯され、絶望しながら湖に沈んでいく彼女たち。
だが、オレは全く可哀想だとは考えなかった。
むしろ下等生物に相応しい末路を与えてやったことに興奮し、オレは再びペニスの鎌首をもたげさせたのだった。

「見えなくなっちゃったね。
 じゃあ、このコたちとはもうサヨナラしましょ。
 ふふ、裕也クンのパワーが込められたせーえき、おいしそう……」

アスカさんはそういうと、手のひらを傾けて大量の精液を飲み始めた。
オレに音を聞かせるかのように、わざとゴクリゴクリと喉を鳴らしながら……
女子高生だった黒い点々も、濁流と一緒に次々とアスカさんの口内に消えていった。

「……!!」

こうして、アスカさんは極小サイズの女子高生たちごと、手のひらいっぱいの精液を飲み干してしまった。
グローブに付着した精液まで綺麗に舐めとりながら、まだ不足だと言わんばかりにオレを上目遣いに見上げてくる顔は、淫乱な女魔王そのものだった。

「裕也クンの怪獣おちんちん、またこんなに……」

アスカさんは、再び禍々しく復活したオレの巨龍にキスをして、先っぽから徐々に咥え込んでいった。
オレのペニスとアスカさんの舌という、2体の怪物が激しい格闘を繰り広げていった。
実はこのとき、アスカさんの口内には精液と一緒に飲み込まれず、取り残された極小女子高生が数人残っていたのだ。
しかし、彼女たちは途方もなく巨大なオレのペニスに突きつぶされたり、アスカさんの舌に押しつぶされたりして、次々と消えていった。
100倍に巨大化したオレたちと100分の1に縮小された彼女たちとのサイズ差は、実に1万倍。
オレのペニスもアスカさんの舌も、彼女たちから見れば1キロメートル超という、もはや想像すらできない超巨大サイズになっていたのだ。

指を遥かに凌駕する快感を与えるアスカさんの舌には、長時間抵抗し続けることは不可能であった。
オレはあっと言う間に登り詰めてしまい、2度目の大量射精を始めた。

「くああっ…!!」

今度はアスカさんの口の中に、精液をぶちまける。

 どぷっ…どぷっ…どびゅるるるる!!

アスカさんは、この精液もごくごくと飲み干していく。
口の端から零れた一滴も指で拭い取り、残さず舐めとることも忘れずに……
そして、口内で唾液に翻弄されながらも残っていた最後の極小女子高生たちにも、精液の縮小力が効き始めていた。
微生物以下の存在に堕ちていく彼女たちが最期に見たのは、巨大な怪物へと変貌していく精子だった。
精子の尻尾で跳ね飛ばされ、もはや海のようになった精液に押し流され、アスカさんの喉の奥へ今度こそ一匹残らず送られていったのだ。


アスカさんは文字通り満腹といった感じで、うっとりした目でひざまづいたままオレの顔を見上げた。

「嬉しいな♪ 裕也クンがここまでノリノリになってくれて。
 ね? これからも、ずーっと巨大化えっち、してくれるんだよね?」
「はぁ……はぁ……オレ、何だかもうすっかりハマっちゃいました。
 これ、ホント、凄いですよ。アスカさんが病み付きになったの、よく分かります」
「わーい、やったー!
 じゃ、まだ一つだけ内緒にしてた事があるんだけど、それも教えちゃうね」
「え……?」

アスカさんが立ち上がった。

「最初からコレを見せたら、さすがに刺激が強すぎるかなって思って、やめてたんだ。
 でも、もう今の裕也クンならもう大丈夫だと思うから……」
「な、なんですか、アスカさん?」
アスカさんが満足そうにお腹をさする。
「うふふふ、これだけあれば。……ああっ、来そう! 裕也クンの精液の魔力!」

忘れていた!
アスカさんはオレの精液を大量に飲んでしまっていたのだ!

「わわっ、そうだった! ヤバい、アスカさんが小さくなっちゃう!」
「違うわ……今の裕也クンと私は魔族だから、陰と陰の力で『効果は逆』なの。
 あっ……ダメ! 今は説明している時間がない!
 ふふ、でも見ればすぐに分かるわ! アスカゾーラ様の真の力をねッ!」

 グオオオオオオオオオッッ!!!

アスカさんの身体がドンッと膨らみ、見る見るうちに、またどんどん巨大化し始めた!
オレの精液の力が人間の場合とは逆方向に働いて、しかもあんなに大量だったから、暴走しているのだった!
アスカさんはオレを置きざりにして、何処までも超巨大になっていった!


再巨大化を完了したアスカさんは、最初にオレが見た姿より遥かに巨大に見えていた。
オレだって100倍の巨人なのだから、つまり今のアスカさんは100倍の、さらに数百倍の超大巨人なのだ。
大気圏を突き抜けて聳え立つ姿は、オレですら、アスカさんのブーツが壁のようにそそり立っているのを見上げるほどだった。
もはや魔王などという存在は遥かに超越した、美しき魔性の超巨大女神であった。

破壊の女神になったアスカさんは、遥かな遥かな高みから衝撃波そのものの声を降り注がせる。
オレですら耳を塞ぐほどの音量が、見渡す限りの街を崩壊させていく。

「ふははははは、滅びよ! 人間ども!」

超・超・超巨大なブーツを持ち上げ、大空を黒い靴底で覆い尽くす。
まだ生き残っている人間がいれば、地平線の果てから果てまでを押しつぶす、黒い空が落ちてくる「最後の日」を目撃することになるだろう。
アスカさんは容赦なく、数千万の人々が住むこの首都圏をまるごと、彼方の山々から海の向こうまで一気に踏みつぶした。
オレもその例外ではなく……


「裕也! ……裕也ったら!」
「……ん? わわっ!?」
「もう何してるの? ねぇ、始めるよ?」

オレは現実に引き戻された。
いや、真の現実ではなく仮想現実の世界に、だが。
どうやら長い長いロード時間が終わったようだ。

「うふふふ、楽しみ楽しみー。裕也と3時間かけて、ゆっくりたっぷり世界を滅ぼしちゃうんだ〜♪」
 それに今日って、世界の終わりを迎えるにはすっごくナイスタイミングの日なのよね♪」
「え、今日って金曜……あ、9月13日! 13日の金曜日だった!」
「そういうこと♪ じゃ、こないだ言った通りのストーリーでね!」
「OK!」

オレはひとり、暗闇に包まれた世界に立っていた。
もはや馴染みになった大魔王のコスチュームに包まれた、自分のカラダを見る。
普段よりも逞しく筋肉の発達した肉体。
全身にみなぎる魔力が感じられ、強くなった自分が分かる。

ここは、魔界中心部にあるアスカさんとオレだけの居城。
この玉座の間から、空間をねじ曲げて人間界への入口を開くのだ。
何度も滅ぼしてきた世界だが、今日は新しい趣向を加え、改めて人間どもの世界を破壊し尽くしてやる。
魔符を呟き、空中に強引にツメを立てるようにすると、空間に裂け目が生まれて明るい光が射し込んできた。
オレは強引にそれを押し広げ、世界を終わらせるための第一歩を踏み出す。




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